『司法改革の時代』を書いた但木敬一氏(弁護士、前検事総長)に聞く

『司法改革の時代』を書いた但木敬一氏(弁護士、前検事総長)に聞く

検察・法務省でキーポジションを歴任。裁判員制度の導入で司法が「革命的に」変わろうとしている機会をとらえて、その制度作りに深く関与した著者に「被害者とともに泣く検察」を語ってもらった。

--この本で、いわば「劣等生」と称しています。それでも、なぜ検事総長まで上り詰めることができたのでしょう。

時代だと思う。検察庁にしても裁判所にしても役人の世界。勉強でいちばんできる人が偉くなるのが伝統的スタイルだ。でも、それは平時。いまは平時ではない。

僕は、抜けているところが人に警戒心を与えない。小さいときに中耳炎を何度もやって、耳がやや遠い。聞くことに集中しないと、聞きとれない。それが習い性となって、誰の話でも一生懸命に聞く。

説得には相手が何を言いたいか、正確に理解することが大事だ。有能な同僚も先輩もいっぱいいる。それでも日弁連(日本弁護士連合会)や政治家とうまくいかないのは、自分の抱く方針を一歩も譲る気がないため、相手の言いたいことを聞いていない。これでは話にならない。じっと聞けば、いやな相手でも何をやりたいのかよくわかる。

つまり、法務省として理論構築をバシッとやって、その理論構築のままに突き進み、相手をはねつける人間がよしとされた時代から、そうではなくて、相手の考え方から出発してものを考えられる人間が必要な時代になったということだろう。

それで、少し間が抜けていて、だけど人とよく会いよくものを聞いてくるという人間が突如重用された。時代の変化がそういう人を呼び集める。僕は時代精神のブラックホールに吸い込まれてきた人間なのだ。

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