『司法改革の時代』を書いた但木敬一氏(弁護士、前検事総長)に聞く

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 検察としては、航空や鉄道の事故調(運輸安全委員会)のような医療事故調査委員会を早く作ってもらいたい。それが刑事事件に値する事故なのかどうか、原因を専門家に判断してもらう。最先端医療はリスクをとらないとやれない。医者は一生懸命やったが、結果的に駄目だというのはありうる。

--ますます国民感情が裁判に反映することになりますか。

裁判官は国民が何を考えているかと忖度(そんたく)しながら判決を出す。殺人事件は減っているが、死刑の数は増えている。これは、遺族感情を支持する国民感情を裁判官が忖度しているからだ。

それなら、国民感情を想像しながらではなく、裁判官と直接に話し合ったらいいではないか、裁判員としてと。プロはプロで法秩序維持のための発想で見方を言ったらいい。

裁判員は自分の日常的な感覚をそのまま披瀝する。たとえば老々介護で耐えられなくなって殺すというような事件がある。どういう状態になったら、自分の親をも殺すしかないと思うようになるのか。介護している人しか、本当のところはわからない。

裁判員はむしろ裁判官になってはいけない。制度の本筋は、裁判員が生活の中で得ている感覚をそのまま述べる。そして、職業的な裁判官との間で大いに評議をして一つの結論を導ければ、それが答えとしてふさわしい。

--もう一つの誤解に、短期間で終わるというのがあります。

早く終わると最高裁が宣伝しすぎたために、死刑さえ3日で判決するような言われ方をしている。

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