「現状不満足企業」で革新を 花王前会長・後藤卓也氏④

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ごとう・たくや 花王前会長。1940年東京生まれ。64年千葉大学工学部卒業、花王石鹸(現花王)入社。タイへの出向などを経て90年取締役、97年社長に就任。7年在任後、2004~08年会長。現在はリコーの社外取締役や日本マーケティング協会会長などを務める。

花王はなぜ2005年3月期まで24期の連続増益が果たせたのか。花王の主力の商品群が洗剤やシャンプーという生活必需品で、景気が悪くても極端な影響を受けにくい背景は確かにあります。最近は少子高齢化で国内市場が縮小し、海外展開を加速させないと成長は難しい。とはいえ05年まで厳しい競争の中で成長を続けてこられたのは、変化とともに生きてきたからだと思います。競争相手も市場環境も顧客も、日々変わる。簡単には先読みできない。その中では、できるだけ素早く変化に対応し、追随していくしかない。半歩先、一歩先を読む努力と、変化に気づいたときに自らが変わる、そのことが大事だと思います。

 ただし、そうすればよいと頭でわかっていても、組織として実行するのは大変です。硬直的な組織は変化ができない。競合相手が新たなことを始めても、今までウチはこうやって成功してきたから、このままでよい、と。ところがそれで1~2年放っておくと、競合相手が伸びてしまうことがある。そのときに、成功体験があっても今のままではいけないと、謙虚に反省することが必要です。だから私は「絶えざる革新」ということを標榜してきました。

現状に満足せず、絶えず革新をしていく

組織が大きくなれば壁もできるし、意思の疎通を欠くことが多くなるので、絶えず変わっていくことが難しくなります。経営としては、組織にいかに揺らぎを起こさせるか、ということを考えていました。

これは社員に危機意識を持ち続けてもらうしかありません。私はずっと危機意識を訴え続けてきました。年初に一回言うだけではダメです。機会あるごとに危機意識を言う、あきらめていないから言い続ける、これが肝心だと思います。

私は社員と話したとき、締めの言葉を次のように言っていました。

今日も同じ話をしました。なぜですか。それはできていないからです。そして皆さんの資質に対してあきらめていないからです、やらなければいけないからです、と。

私は「現状不満足企業」という言葉が好きです。どんなにうまくいった社員でも75点か80点しか与えませんでした。100点を与えて満足してしまうと、それで終わってしまうからです。たとえば大ヒットした洗剤アタックを発売したのは1987年ですが、20年以上経った今でもつねに改良しています。決して終わりはない。現状に満足せず、絶えず革新をしていく、私が先輩から引き継いだこの考え方を、これからも引き継いでいってほしい。

週刊東洋経済編集部
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