「会社はあなたの夢を実現する場だと思って頑張ってください」「自分探しをしてください」など、格好いいことを言って若い人を採用する会社がありますが、私に言わせればとんでもないことです。
花王の製品に期待してくださる多くのお客様がいます。私たちはその期待に応えなければいけない。会社には使命があるし、会社の夢がある。そんなときに、どうして入社する一人ひとりの夢に会社が合わせられるのですか? 入社試験で、「会社は私に何をしてくれるのですか」と堂々と聞いた人がいました。とんでもない勘違いをしています。
10年後、20年後、自分はこうなっていたいという明確で具体的な夢を描き、それを実現するべく努力することは大切なことです。ただ、その夢が会社の使命・夢に合っていなかったり、漠としたものであるのなら会社の夢に自分を合わせるように努力してください。それもしないで、この会社は自分の考えていたところと違う、ちっとも面倒を見てくれないと3年で3割の人が辞めていく。ばかかと言いたい。3年で何がわかりますか。「自分探し」より「自分試し」を。この点は若い人に対して今いちばん強調したい点です。
「目の前の峠に登ろう」
将来に不安を持つ若い人に対しては、「目の前の峠に登ろう」とアドバイスしてきました。
目の前に峠があったら、汗水垂らして疲れても、登ってみようよ。登ってみたら、すばらしい景色が広がっているかもしれないし、次に目指したくなるような峠が見えるかもしれない。登ってみもしないで、ふもとにとどまっているだけでは何も変わらないし、得るものもない。登ってみて、もし断崖絶壁だったら、戻って次の違う峠を目指せばよいでしょう、それが若さでしょう、と。
私は一人ひとりの仕事に無駄な仕事はない、何らかの役に立っているということも言い続けてきました。仕事はマニュアルどおりにやっていればよいということではありません。マニュアルどおりにやると同時に、そのマニュアルを変える工夫をしてくださいと言ってきました。生産性をもっと上げるにはどうしたらよいか、一日機械と向き合っているあなたたちなら、きっとわかることがあるはずです、そう言って単純な作業をしている人を元気づけてきました。社内報でも、地味な部門にスポットを当てました。製品の安全性チェックをしている人や生産現場の人など。そうして自分は役に立っていると感じてもらう。それが経営の大事な仕事だと思います。
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