MSヤフー連合誕生でもグーグル天下のネット業界
最も可能性の高いシナリオは、月間3億人のユニークユーザーが集まるヤフーにブランドを一本化し、メールなどのサービスを統合することだ。集客力向上によってシェアの単純合算以上の媒体価値(広告価値)の向上が期待できる。グーグルにしても、ポータルとして人気のあるヤフーと、人気SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)のフェース・ブックに出資するMSのコングロマリット化は脅威だろう。
こうした動きに対して、今のところヤフーは「当社の価値を過小評価している」と提案を拒否。米AOLとの統合や、米ニューズによる出資など、MS以外の提携相手を模索している様子だ。
そこで焦点となるのが、MSの買収価格引き上げだ。米のヤフーは日本では検索トップのヤフージャパンや中国アリババに出資し、これらの潜在的価値は高い。MSにも買収価格を上げる余地はある。一部の株主が提案を受け入れるべきと株主訴訟を起こしていることから、今後、買収価格が引き上げられれば、ヤフーが拒否するのは難しくなるだろう。
一方、追われる側のグーグルは買収提案発表直後、両社統合によるネット業界での競争低下を危惧する声明を発表。自らヤフー買収を仕掛けるのは難しいが、たとえば検索エンジンや広告システムをライセンスするなどして救済する可能性はある。そうなれば、ヤフーも強みを持つコンテンツ事業に集中できる。
また仮にMSとヤフーが統合したとしても、検索分野でのグーグルの優位性は簡単には揺るぎそうにない。グーグルは周辺サービス強化に向け、ユーチューブ買収に続く積極策を打ち出すことになるだろう。
反対にMSは買収後のほうが、より難しい舵取りを迫られる公算が高い。ネックは「企業文化」問題だ。
ヤフーは経営の独立性を重視するうえ、自由闊達なシリコンバレーベンチャーの社風がいまだ色濃い。シアトルに本社を置き、大企業然としたMSとは文化が大きく異なる。本社が物理的に離れていることもあり、統合となれば、ヤフーの従業員の流出が危惧され、ネット企業で最も重要な人的資本の維持をどう担保するかが、頭の痛い問題になる。
なお、日本のヤフーは米ヤフーから経営上独立し、仮にMSと統合しても、日本での「MSN」とヤフーの統合は微妙。ヤフーがグーグルに先行する日本市場では、勢力図の変化は少ないといえそうだ。
(週刊東洋経済)
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