MSヤフー連合誕生でもグーグル天下のネット業界
マイクロソフト(MS)がヤフーに446億ドル(約4・5兆円)の買収提案をしてから約2カ月。2月半ばにヤフーの取締役会が提案を拒否したまま、膠着状態となっている。米メディアの報道によると、3月半ばに両社幹部が密会、MSによる必死のアピールは続く。今後、ヤフーの株主総会(時期未定)に向け委任状争奪戦にもつれ込む可能性もあり、事態は依然流動的だ。
「巨人」を駆り立てたのは、焦りとグーグルへの執拗なまでの対抗心だ。1990年代に基本ソフト(OS)でパソコンを制覇したMSはインターネットでもポータルの「MSN」を軸に覇権を握ろうとしていた。ところが現状では、ネット業界で最大の収益源であるネット広告を牛耳っているのはグーグルだ。
米IT調査会社のヤンキー・グループによると、米国のネット広告市場規模は2011年に503億ドルと07年水準の2倍に達する見通しだ。すでにパソコン需要が成熟期にある中で、現在でも赤字が続くネット事業の反転攻勢は、MSの今後の業績成長にとっても欠かせない。
しかも最近では、グーグルがネット経由で「ワード」のようなパソコン用アプリケーションの無償提供を開始。携帯電話用OSの開発にも乗り出すなど、MSの領域にまで侵入し始めており、このままでは本業まで脅かされかねない。
ネット時代の寵児ともてはやされたヤフーにも、かつての輝きはない。
最大の痛手は検索連動型広告導入でグーグルに出遅れたことだ。企業買収でもグーグルが動画共有サイト「ユーチューブ」などを買収する中で、ヤフーでは目立った買収がない。
失策続きにより、06年12月期にはついに営業減益に陥った。幹部の辞任も相次ぎ、07年6月にはついにテリー・セメルCEOが辞め、創業者のジェリー・ヤン氏がCEOに着任。今年1月に発表した07年12月期決算は2期連続の営業減益、今期も減益見通しと立て直しは急務だ。
1+1以上の価値がある?ネックは企業文化の違い
MSによる買収提案はこうした矢先のことだ。狙いは、両社統合による相乗効果。単独ではネット検索や広告シェアでグーグルに大きく水をあけられているが、2社合わせればグーグルの背中が見えてくる。