訪日客が殺到!老舗商店街のスゴい「仕掛け」 数万円の高級包丁が飛ぶように売れるワケ

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もちろん、始めからスムーズに運営が行われていたわけではない。近辺には、宗右衛門町商店街、道頓堀、戎橋商店街、心斎橋筋商店街といったメインストリートの存在がある。最初は、組合加盟の店舗から協力を仰ぐのも困難だったという。まずは、近隣の協力を得ることからスタートした。そんな状況で千田氏が重要視したのは、商店街という点ではなく、エリアという面での戦略だった。

「リトルトーキョー」ではない魅力を出せるか

「近辺には関西を代表するような巨大な商店街がある。そら、自分たちだけで大きな話しを持っていってもダメですよ。大阪人は儲かるとわかる話しには乗りますが、なかなか最初の一歩は踏み出さない。何枚もの企画書をまとめ、近隣する商店街、行政や旅行会社をまわり、ミナミのエリア全体での集客を考えました。そのことが、必ず自商店街の未来にも繋がると信じていましたので」

千田氏と同じように考える関係者も増え、2010年頃から官民一体でのなんば・心斎橋エリアでのインバウンド対策がスタート。ミナミにしかない独自の文化を全面にうたい、旅行客の集客につなげている。

ここ数年の大阪では、梅田駅周辺の大阪北ヤードの開発、「あべのハルカス」を中心とした阿倍野再開発など、市内には大型のショッピングセンターが続々と誕生している。ミナミでも、観光客向けに通常の価格の1.5倍程度の価格で商売をする店舗も出てきた。千田氏はそんな状況に警鐘を鳴らす。

「北も阿倍野も含めて最近の大阪は、『リトルトーキョー化』していると感じます。悪くいえば、没個性化してきている。ただ、それでは長い目で見ると大阪から観光客は離れていく。観光客向けの高単価な商売も淘汰されていくでしょう。今あるものを活かしながら、新しいものを提供する。そんな姿勢がいちばん大切だと思いますね。実際に私達も、ミナミでしかできない、自商店街でしかできない伝統的なモノづくり体験を提供するなど、企画面を強化しています」

取材の最後に、千日前道具屋筋商店街の千田氏はこんなことを力強く話してくれた。「今の訪日バブルは少なくてもあと5、6年は続くでしょう。そんな中、私たちのような資金力がない小さな商店街でもできることはある。立地や行政との兼ね合いという壁は、アイデアや行動で必ずカバーできます。今からは取り組み始めても、決して遅くはないと思います」

閑古鳥が鳴く商店街は全国に無数にある。でも、やり方を工夫すれば、活気のある商店街に蘇らせることもできる。千日前道具屋筋商店街のケースは、そのことを私たちに教えてくれるのではないだろうか。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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