B-CAS存続の行方、地デジ視聴独占に強まる批判
地上デジタルテレビ放送への完全移行まで約2年。家電量販店ではエコポイント政策もあって、地デジ対応テレビの販売が好調だ。
だが、テレビやチューナーに同梱の「B-CASカード」を理解する消費者はまだ多くない。カードは番組の録画・複製を制限している暗号(スクランブル)を解除する“鍵”で、著作権を保護している。これを機器に挿入しなければ録画はおろか視聴もできない。
テレビ放送自体を左右するカードだが、その高い公共性とは裏腹に、発行・管理はビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(B-CAS)という民間企業が独占している。この企業をめぐる議論が、総務相の諮問機関・情報通信審議会で大詰めを迎えている。
審議会の下部組織である「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会(デジコン委)」は、7月中旬の中間答申で現行のカード方式以外の新たな著作権保護策の追加導入を提言する見通し。カード以外に機器搭載のソフトウエアで保護を図る方式が有力で、「ソフトはカードより低コストで、小型かつ低所得者向けの受信機が生産しやすい」(大手電機メーカー)といったメリットがあるという。
この新方式ではB-CAS社以外の「非営利かつ透明性の高い法人」に暗号鍵の発行・管理を任せる可能性が高い。ただ新方式と並行して現行の方式も継続されるため、手続きが煩雑で混乱するとの指摘がある。このためカードを小型化する案も浮上しており、B-CAS1社体制が続く可能性は残る。
見直しの背景には、営利の民間企業B-CAS社に違和感を示す声が目立ち始めていることがある。3月の参院総務委員会では、民主党議員からB-CAS社の独占禁止法抵触の問題について質問が出た。公正取引委員会局長は「今後、新規参入を阻害することがあれば抵触するおそれがある」との見方を示している。