『茶色いクツをはきなさい!』を書いた藤巻幸夫氏(藤巻兄弟社社長)に聞く
--負けずぎらいですか。
僕自身は過去にとらわれない、人の評価を気にしないタイプだ。ヨーカ堂を辞めるときにもいわれた。3年で辞めるのかと。唯我独尊ではない。健康を害したこともある。新しいことをやれば間違うこともある。でもやらないと、自分も時代も変わらない。
科学界にバタフライ・エフェクト(蝶の効果)という有名な話がある。「北京で一羽の蝶々がはばたくと、ニューヨークではハリケーンが生じる」と。このたとえは、「気づきが共鳴を呼び、共鳴が誘発を生み、誘発が響き合いになり、その響き合いが相互作用を作り出し、この相互作用がやがて爆発につながる」とも説明される。小さな一歩であっても、いずれ大きな力になる。そう思ってやっている。
--変化に流されませんか。
精神的には変えてはいけないことがあると思っている。
茶道に精通した井伊直弼に『茶湯一会集』という本がある。そこに、「余情残心」「独座観念」という言葉が書かれている。客人はいい話が聞けたなと、「余情残心」しつつ辞し、主人は茶器を「独座観念」、感謝の気持ちで片付ける。この精神は伝え続け、変えるべきではない。
--気遣い、気働きしすぎて疲れませんか。
そんなことはない。武士道も伝えていきたい。武士道にはいろいろな解釈があるだろうが、武士はいつ斬られるかわからない、それだけ今日を潔くよく生きる。僕は、本気とか本音とか本心とか、また本流とか本筋とか本当とか、とにかく本物が好きだ。もちろん『武士道』を書いた新渡戸稲造はそんなことを書いていないが、それが大切だと思っている。
いまはとかく建前が多く、それを使い分けようとしがちだ。本当に自分を、さらに時代を変えようと思うなら、本気で真剣に行動するしかない。そういう人間としての身構えを持ってほしい。