米国のイスラエル政策は変わるのか、オバマ大統領カイロ演説の波紋
バラク・フセイン・オバマ大統領は本心を表したのか。2009年6月4日のカイロ演説は世界に波紋を呼んでいる。オバマ大統領はイスラエル政策を本当に変化させるのか。
オバマ大統領は政権発足に当たり、ホワイトハウスの要となる主席補佐官にラーム・イスラエル・エマニエル民主党下院議員を起用した。
エマニエル氏の父親はイスラエル生まれのユダヤ人。エマニエル氏は民主党内の親イスラエル派政治家として知られている。エマニエル氏はユダヤ教徒である(米国のユダヤ人はキリスト教徒も多い)。ユダヤ教の規定では母親がユダヤ人でないと子どもはユダヤ人になれない。エマニエル氏の夫人は子どもをユダヤ人にするため、ユダヤ教に改宗している。
オバマ大統領は、米国の外交政策を担当する国務長官にヒラリー・クリントン民主党上院議員を起用している。ヒラリー・クリント氏は夫とともに親イスラエルの政治家として知られる。クリントン政権時代、主要な閣僚の多くをユダヤ系米国人で占めていた。このときのサマーズ財務長官は、オバマ政権で国家経済会議委員長に就任している。
大統領選挙期間中からオバマ氏は親イスラエル勢力に警戒されていた。オバマ氏が米国内でユダヤ人と仲のよくないアフリカ系米国人であること、オバマ氏の取り巻きに反イスラエルの立場をとる人物がいたからである。しかし、オバマ大統領が国務長官、主席補佐官に親イスラエルの政治家を起用したことで、親イスラエル勢力の懸念は払拭された形になった。
オバマ大統領はイスラエルのガザ攻撃でも沈黙を守った。このことはイスラム世界を憤激させたが、イスラエルは、「米国の絶対的な支持」を再確認することになった。
ジョージ・ブッシュ政権からの変化を掲げて当選したオバマ大統領だが、イスラエル政策だけは変化しなかったかに見えた。しかし、オバマ大統領のカイロ演説はこの見方に修正を迫るものになった。