米国のイスラエル政策は変わるのか、オバマ大統領カイロ演説の波紋
オバマ大統領の中東訪問を前にした5月に米国を訪問したネタニアフ首相は、オバマ大統領が要請する入植地拡大停止とパレスチナ国家樹立を拒否する姿勢を見せている。
イスラエルはこれまで国際社会が非難する政策を行っても米国の絶対的な支持を当てにすることができた。ところが、カイロ演説でこの確信が揺らいでいる。
米国の政策に変化はない?
オバマ大統領のイスラエル政策は本当に変わるのか。注目されるのは、今回のオバマ演説が示唆する「変化」が米国務省や議会と根回ししたうえで表明されたようには見えないことだ。オバマ大統領が本気でイスラエル政策の変化を目指しているという前提で考えると、今後の米国のイスラエル政策に関して、次のようなシナリオが考えられる。
(1) オバマ大統領は米国内での高い支持率と国際世論からの高い好感をテコにして、パレスチナ国家樹立とヨルダン川西岸での入植地拡大の停止を求めていく。
(2) 一方でイスラエル政府と米国内で力を持つイスラエルロビーが議会を動かして、オバマ大統領の変化を阻止する動きを強めていく。
オバマ政権の今後の政策を考えるうえで、重要な視角を与えてくれるのは、米国の政治学者であるピーター・フィーバー・デューク大学教授である。フィーバー氏はクリントン政権とブッシュ政権の国家安全保障会議(NSC)メンバーで、ブッシュ政権では戦略企画・組織改革担当の特別補佐官を務めた。