米国のイスラエル政策は変わるのか、オバマ大統領カイロ演説の波紋
イスラエルの衝撃
カイロ演説の内容は新聞、テレビで広く報道されている。オバマ大統領のサウジアラビア、エジプト訪問はアラブ世界、イスラム世界との関係改善を図る目的があった。
そのため演説にはイスラム世界へのリップサービスが入ることが予想されたが、内容は予想以上だった。オバマ大統領は、「私はキリスト教徒だが、ケニア出身の父親は代々のイスラム教徒だった」と自分の出自を明らかにしたうえで、米国とイスラム世界の関係改善を呼びかけた。
中東和平について、「パレスチナ人が--イスラム教徒もキリスト教徒も--彼らの故郷で苦しんできたことは否定できない。彼らは60年以上も苦痛に耐えてきた」とパレスチナ人に強い同情を示したうえで、イスラエルのヨルダン川西岸での入植地拡大に反対し、「米国はパレスチナ人が彼らの故国を持ちたいという希望を否定することはない」と語っている。
パレスチナ人の境遇改善は暴力に頼るのではなく、アフリカ系米国人の公民権運動を参考にして平和的な活動で実現すべきだと語ったというのも興味深い。
パレスチナ人国家と、ユダヤ人国家・イスラエルの2国家がパレスチナの地で共存する政策は、オスロ合意(1993年)とそれを実現するためのロードマップ(03年)で米欧日をはじめとする国際社会によって承認され、推進されている。
米国のクリントン政権もジョージ・ブッシュ政権も2国家共存による和平実現を語ってきた。この意味でオバマ演説はこれまでの米国の中東政策を継承している内容で新鮮さはない。
ただ、現在ではオスロ合意、ロードマップとも「死文書」と化しており、パレスチナ国家樹立の推進力は弱まっている。特にイスラエルのネタニアフ政権は内心ではパレスチナ国家樹立に反対し、ヨルダン川西岸での入植地の拡大を目指していると見られている。