マイナス金利が金融緩和効果を発揮する日 適切範囲で実施なら負の面は大きくならない

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「量」「質」「金利」というツールを広げることで金融緩和を強化して、2%のインフレ目標へのコミットメントを強めた意味で、日本銀行の行動はプラスに評価できるだろう。一方、ユーロ圏での先例が示すように、マイナス金利政策そのものについて、効果そして副作用が極めて大きいツールと位置付けるのは難しいのではないか。経済全体にとっては景気底上げのための金融緩和を強化するためのツールの一つという位置づけが無難に思える。なお、銀行や資産運用などの金融業界では、事業環境が大きく変わる側面は大きいが。

米利上げ継続路線の撤回が必要

なお、マイナス金利導入後の2,3営業日程度は、株高・円安で市場は反応した。その後は、2月11日までに日経平均株価が1万5000円前後まで急落し、為替市場でも一時1ドル110円台に円高が進むなど、マイナス金利導入よりも株安・円高が進んでいる。日銀のマイナス金利導入に市場は期待していないし、むしろ逆効果を発揮したようにもみえる。

実際には、2月に入ってからの株安・ドル安の主たる要因は、経済指標の下振れ米経済の後退懸念が高まり(筆者は杞憂と認識しているが)、さらには資源安がもたらす一部企業の破たんで欧米銀行のバランスシートが大きく毀損する懸念が高まった、など外的な要因で説明できる。これらの不確実性の高まりに基づく金融市場の値動きをすべて、日銀の政策によって制御するのは不可能だろう。

米FRBの利上げ開始による広範囲な副作用(資源価格下落、信用市場でのスプレッド拡大、ドルペッグ制度への疑念の高まり、銀行融資態度の厳格化)が、米国を含めて世界経済に予想外の足かせになっている。筆者自身は、FRBの利上げ開始がもたらすこれらの副作用を見誤ったと反省している(後知恵だが時期尚早だったのだろう)。

FRBが利上げの副作用や景気下振れリスクを強く認識して、今後利上げ継続路線をいったん撤回することが、年初からの金融市場の激しい動揺を収めるきっかけの一つになると考えている。

村上 尚己 エコノミスト

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むらかみ なおき / Naoki Murakami

アセットマネジメントOne株式会社 シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、外資証券、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。

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