米国の利上げ開始がなぜ悪役にされるのか バブル崩壊の原因に直結させるのは早計だ

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1月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、追加利上げを見送った(ロイター/アフロ)

2016年の金融市場は大荒れで始まった。さまざまな要因が影響したが、2015年12月にFRBが利上げを開始したことはその一つ。国際的な資金フローや経済動向に対する不確実性が高まったと指摘されている。先進各国の金融緩和により成長率が支えられ、2015年までの先進国の株高が実現していたが、その大きな構図が変わることへの疑念があるのだろう。

FRBは利上げ開始後も、バランスシートの規模は当面維持するが、利上げは限界的に金融引き締め的に作用する。筆者は、これまでのFRBの金融緩和が経済成長を支えた側面が大きかったと考えており、FRBの利上げ開始で、市場で不確実性やボラティリティが高まるのはやむをえないと認識している。

冷静に見定めたい利上げ後の米国景気

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一方、FRBが2014年末に量的金融緩和拡大をやめて1年以上経過しているが、2014年までの金融緩和が強烈に作用したために株式市場ではバブルが発生しており、調整はやむをえないという見方もある。この立場に立つと、FRBの利上げ直後の最近の金融市場の混乱は、これまでの先進各国の量的金融緩和など失策の帰結との評価になる。

そのため、今後FRBなどが行ってきた量的金融緩和強化に対する批判的な見方が強まるかもしれないが、金融緩和の手仕舞いを「バブル崩壊」に直結させるのは、早計な見方ではないか。

実際に、株式市場などが割高な領域にあるかどうかはバリュエーションの判断基準にもよるし、米国企業の業績改善が続くかどうか次第である。米国では景気減速のシグナルはみられるが、業績悪化をもたらす景気失速には至らないと、当社は現段階では判断している。FRBの利上げ後も経済成長が続くかどうかを冷静に見定めたい局面である。

ところで、FRBなど中銀による大規模国債購入という量的金融緩和策に対する懐疑的な見方はいくつか類型がある。株式など資産価格への行き過ぎた影響だけではない。国債購入が財政規律を損ねることで、金利急騰やインフレをもたらすリスクがあるとメディア等では指摘された。

 昨年出版されたバーナンキ前FRB議長の回顧録には、FRBによる国債購入拡大に、教条的に反対する政治家への対応に苦慮してきた様子が描かれている。日本でも、2013年に日本銀行がQQEを導入した後には、「金融緩和が財政規律を毀損させ、歳出拡大や金利高騰を招く」という批判がメディアでも散見された。

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