孫社長が語った「スプリント反転」は本当か ソフトバンクの業績の実態とは?
しかし、本当に明るい兆しが見えてきたと言えるのだろうか。
米国で上場しているスプリントは、1月26日に第3四半期決算(2015年4~12月期。米国会計基準)を公表している。第3四半期におけるEBITDAは54.9億ドル。コスト削減は進んだが、償却費が51.9億ドル(前年同期は約38.9億ドル)と膨らんだ。
また、有利子負債が多く、支払利息は16.3億ドルと巨額で、税引き前利益は13.1億ドルの赤字。税引き後は14.4億ドルの赤字だ。フリーキャシュフローも依然としてマイナスが続く。現金・現金同等物は、昨年12月末までの9カ月間で18億ドル減って21億ドルになっている。
プレゼン資料では、返済圧力が今期2億ドル、来期37億ドルあるのに対して、手元流動性は120億~150億ドル確保(16年度に実施する予定の項目も含む)できるので、潤沢な流動性を維持していると強調した。このプレゼン資料と、キャッシュフロー計算書から受ける印象は、大きく違う。
株価は2ドル台に低迷、減損の可能性も
四半期ごとに見ても、第2四半期(同7~9月期)は0.02億ドルの営業赤字だったが、第3四半期(同10~12月期)は1.97億ドルの営業赤字と赤字幅が拡大。改善基調にあるとは言えそうもない状況である。
契約数は確かに伸びているが、他社と比較すると物足りない印象だ。スプリントは4~12月にポストペイド契約が118万件の純増となった。だが、かつて買収を模索し、昨年4~6月期に契約数でスプリントを抜いたTモバイルUSは、この間339万件の純増だ。
さらに言えば、通信品質はネットワークを整備した地域のユーザ-数(つまりは混雑状況)に左右される面が大きい。スプリントは他社より顧客が少ないため、整備の進展につれて速度に余裕が出てくるのは当然とも言える。
こうした状況から、スプリントの株価は2ドル台で低迷している。このまま株価の低迷が3月末まで続くと、スプリント事業を減損するかどうかの判断を迫られそうだ。
スプリントは2014年10~12月期に21億ドルの減損損失を計上したが、ソフトバンクは会計基準の違いなどからスプリントにおける減損を計上しなかった。孫社長は「減損したつもりで経営する」と語っていたが、この3月末はいよいよ、減損しなければならない事態となる可能性もある。
孫社長は「私の見ているスプリントと、世間の(悲観的な)見方とでは、ギャップが大きい」と語った。そして、3カ月前に「スプリントの再建に2年かける」としていた期間についても「早まる」との見方を示している。世間の見方と孫社長の見方のどちらが正しいのか、それがわかるのもそう遅くはないのかもしれない。
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