「育児社員への配慮やめます」、資生堂の意図

子育て中の美容部員を優遇するのは不公平か

それ以来、時短を利用しながら働く美容部員は、2006年度の460人から2014年度に1133人まで拡大した。美容部員の属する資生堂ジャパンで、育児休業後の定着率は9割と高い。現在それを、約1600人の派遣社員が支えている。

しかし、女性活用では先進企業ゆえ、ぶち当たる壁もあった。まず職場でのひずみだ。独身や既婚者でも子どもがなく、土日・遅番シフトに偏りがちな女性社員からは、「プライベートの時間が取れない」といった不満が噴出。派遣社員が美容部員と同じ質の仕事ができるとも限らず、書き入れどきに顧客にカウンセリングできる人員の不足から、販売機会の損失も目立つようになったのである。

また、時短社員への手厚い配慮がかえって、本人のキャリアを阻んでしまう事例も散見された。「上司は『遅番に入れる?』と聞くこと自体、パワハラになったらいかんと、育児中の人を早番シフトに入れるのが通常になっていた。配慮をしてもらっている育児中社員は、『できる日もあります』とは言い出しにくい状況だった」(資生堂出身でワーク・ライフバランス社長の小室淑恵氏)。

美容部員の仕事は、経験を積むことで技術が伸びる、職人的な世界だ。育児中の社員は、接客スキルを磨ける第一線から外れることで、昇給・昇格の基準となる技能試験で不利になりかねない。実質的にマネジャー職は、遅番シフトまで対応できる社員が就くものになっていった。

一律・過剰な優遇は廃止へ

そうした中で資生堂は、育児中の社員に対する、一律・過剰な配慮の撤廃へと踏み切ろうとしている。

百貨店で接客販売する美容部員のうち、平日の早番シフトに入るのが慣例化していた育児中の時短社員に、できる範囲で土日や夕方のシフトにも入るよう要請。上司と面談し、家族の協力や保育サービスの活用でどこまで可能か、個々の事情を把握した。そのうえで2014年4月から実行に移したところ、冒頭の資生堂ショックとして取り上げられた、というわけだ。

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