資生堂、再建中の中国事業でまさかの誤算 訪日中国人に笑い、現地中国人に泣く
「営業部員が離職して営業が一部機能不全になった。その結果、8月の後半からは化粧品専門店の売り上げが大きく落ちるという状況が出てきた」。
10月30日に開かれた資生堂の決算説明会で魚谷雅彦社長の口から明かされたのは、目下再建中の中国事業で発覚した、まさかの誤算だった。
日本事業の売上高は、前年同期比11%増の1745億円。中国人を中心とした訪日観光客に大人気の高級ラインが店頭売り上げで30%以上成長したうえ、ブランド改革に着手してきた「エリクシール」や「マキアージュ」などの中価格帯も市場の伸びを上回った。粗利の大きい高価格帯が伸びたことで、部門営業利益は前年同期比42.8%増の180億円。利益率は2.2ポイントアップし、10%の大台に乗った。訪日観光客消費による売り上げ押し上げ分は、会社側が把握するだけでも1~9月で130億円を超える。
一方、不振だったのが中国事業だ。中国事業の売上高は前年同期比7.6%減の629億円。これを受けて、今期掲げていた中国事業の通期8%成長は3%に見直された。
その結果、会社全体の通期売上計画は7月発表の会社予想に比べて50億円減収となる7600億円に急きょ下方修正、市場で当初は上方修正が期待されていた営業利益は300億円に据え置きとなった。
いったい、中国で何が起きたのか。
組織・待遇の変更で、営業部員が離反
最大の原因は、現地生産の「ウララ」をはじめとした化粧品専門店向けの4ブランドが、営業部員の離反により大きく売り上げを落としたことにある。「営業部員との十分なコミュニケーションが取れていなかった」。魚谷社長はこう振り返る。
2014年に社長に就任して以来、中国事業の低迷の原因となっている病巣に矢継ぎ早にメスを入れてきた魚谷社長。昨年10~12月には、130億円の在庫引当金を計上し、売り上げを膨らませるための過剰出荷によりだぶついていた百貨店向けの流通在庫を大量処分。次いで、CSO(最高戦略責任者)として招聘した経営コンサルタントのラルフ・アーベック氏を、中国のトップに据えて、経営体制を整えた。急激に拡大するeコマース市場への対応も急いだ。
その一環として、今年4~6月にも在庫処分を実施し、これと並行して、従来はブランドごとに担当者がいた化粧品専門店向けの営業体制を効率化し、7月には給与体系も、成果給によりウェイトを置くものに変更した。これらの改革により、下期からは軌道に乗り、今期は8%成長、2017年には11%成長のシナリオを実現していくはずだった。
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