不況の今こそ、ものづくりを変えるチャンス 仏ダッソー・システムズ社長兼CEOに聞く

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PLMは重工業、自動車産業などで主に用いられてきましたが、新しい業界からも注目が集まっています。CPG(消費者向け商品)の大手企業である米P&Gやライオンなどは、当社の顧客です。ライフサイクルの短い商品を素早く設計し、店頭での陳列方法までシミュレーションできるのはもちろんのこと、コンプライアンス向上にも繋がります。当該製品を開発する一部門に任せっきりにするのではなく、経営者、マーケティング担当者など多くのチェックの目が加わるため、たとえば基本素材に禁止されている化学物質などが含まれないか、早い段階でチェックできます。

顧客のニーズを素早く製品設計に反映する、コンプライアンスを充実させる、コストを下げる、などなど、メリットが非常に多い。そのため、むしろ経営環境が厳しい今こそ、多くの企業がPLMの革新に目を向けています。ビジネスのやり方を変える、いいチャンスになるからです。

--ダッソーのソフトウエアを新興国の企業も積極的に採用していますね。

そのとおりです。たとえばインドのタタが製造する低価格車の「ナノ」は、当社のPLMソフトウエアを用いて開発されています。また驚異的なスピードで売り上げを成長させ今では世界屈指の航空機メーカーとなったエンブラエル社も、当社のPLMソフトウエアを用いています。世界中の多くの部品メーカーとコラボレーションをしながら、効率的に新製品を生み出していくためには、PLMの革新が不可欠です。

中国でも、多くの採用実績があります。北京五輪のメイン会場である「鳥の巣」は、その複雑な設計が話題になりましたが、実はダッソーの3Dモデリングの技術を用いて設計されています。また、2010年開催の上海万博では各パビリオンがオンライン上にもバーチャル3Dで再現されますが、そこでもダッソーのソフトウエアが採用されました。

--3Dを用いたライフサイエンス分野での研究にEUからの補助金がつくなど、ダッソーは研究開発力が高いことでも知られています。

当社は約8000名いる社員のうち、約80%が技術者です。技術者のうち40%以上が研究開発部門に所属し、さらにそのうちの80%がPh.D(博士号)保有者です。ダッソーは、徹底的に研究開発に力を入れている科学(サイエンス)の会社ということができると思います。いま私たちが顧客に提供している製品は、5年後に提供できる製品の機能と比べると、まったくの力不足になっていることでしょう。ダッソーは、それだけ速いスピードで研究開発を進めているのです。


ベルナール・シャーレス●1983年に新技術開発チームの指導者としてダッソー・システムズに入社。R&D部門ディレクター等を経て95年9月に社長に就任。02年5月より社長兼最高経営責任者(現職)。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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