公示地価上昇の深層 進むミニバブル崩壊

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全国平均で2年連続の上昇となった公示地価。が、足元では変調が始まっている。サブプライム問題などで不動産融資の蛇口が急速に締められ、企業破綻も起き始めた。

国土交通省が3月24日に発表した公示地価(今年1月1日時点)は、全国平均で住宅地が前年比1・3%増、商業地が前年比3・8%増と、ともに2年連続の上昇となった。伸びが顕著だったのが大都市圏。東京圏は住宅地が2年連続、商業地が3年連続で上昇した。名古屋圏でも商業地が3年連続で伸長。また、都心部における地価上昇が埼玉県や静岡県など周辺地域へ広がりを見せたことも、今回の調査の特徴だった。

不動産ファンドが資金取れず立ち往生

ここ数年の地価回復を牽引してきたのは、銀座や青山といった一等地の上昇だ。値下がりリスクを遮断できるノンリコースローン(非遡及型融資)を活用した高レバレッジで、私募形式の不動産ファンドが古いビルを買い上げ、再開発して転売する動きが活発化。また、不動産投資信託(REIT)が国内でも上場されるようになったことで、不動産の投資主体にとって資金調達の選択肢が大きく広がった。

 実際、都心一等地の値上がりは「平成バブル」を彷彿させるようなすさまじさだった。たとえば、立ち退き交渉委託先が弁護士法違反事件で摘発されたスルガコーポレーションの地上げ。同社は2005年3月に97億円で取得した渋谷区内のビルを、わずか1年余り後の06年6月に220億円もの高値で売却。概算で84億円もの利益を上げた。まさに”ミニバブル”の様相である。

しかし、公示地価上昇という”大本営発表”の裏では、バブル崩壊が進んでいる。国交省の調査でも昨年後半から地価の変調は明らかだ。たとえば、東京・月島では上昇率が昨年前半の14・3%から後半には2・5%まで低下。同様に東京・大京町では10・6%から5・1%に大きく後退した。地価上昇を牽引してきた一等地については、実勢価格がすでに下がり始めたとの見方が多い。

地価変調の大きな要因は、不動産融資の蛇口が急速に絞られたためだ。サブプライムローン(信用力の低い人向け住宅融資)問題の影響で、外資系金融機関が日本の不動産投資から手を引く動きが広がった。不動産ファンド関連企業の幹部は「昨年10月から資金の出方が厳しくなった。サブプライム問題の影響が大きいUBS、メリルリンチの順で厳しくなった」と話す。

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