公示地価上昇の深層 進むミニバブル崩壊

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 また、国内金融機関も不動産融資を絞っている。金融庁は一昨年末の「主要行等向け監督方針」の中で過熱する不動産融資に対して厳格化の姿勢を明確に示した。その時点で主要行による不動産ファンド向けノンリコースローンは6・6兆円と1年間で3割もの増加を見せていた。前出の不動産ファンド関連企業幹部によると、昨年10~11月を境に国内金融機関による不動産融資は急速に厳しくなったようだ。その結果として「中小規模ファンドを中心に不動産取得の意欲が弱まってきている」(住信基礎研究所)という。

不動産ファンドとともに地価押し上げのもう一つの主役だった上場REITは、昨年半ばから下落に転じた。時価総額は昨年6月末の6兆円から今年3月には4兆円にまで急降下。この面でも不動産マネーは退潮ぶりが明らかだ。

商業地とともに住宅地も状況悪化が鮮明。大きいのはマンション需要の冷え込み。顧客が地価上昇についていけなくなった結果との見方が有力だ。不動産経済研究所によると、首都圏マンションの今年2月の契約率は60・1%と前年同月比17・4%もダウン。在庫数は1万0643戸と、危険水域とされる1万戸を突破した。郊外物件を中心に値引きしなければ、在庫がさばけない状況になりつつある。調査会社・東京カンテイ市場調査部の中山登志朗氏は「都心6区のマンション価格は、今年2月時点で坪単価が360万円。2年前の水準にまで下がっている」と語り、都心部でも値下がり傾向がすでに出始めていると指摘する。

不動産価格の変調を象徴するような企業破綻も発生した。大証ヘラクレス上場のレイコフは3月21日、大阪地裁に民事再生法の適用を申請、負債総額はグループ3社で426億円だった。直近の07年8月期は純利益8億円を計上しており、いわゆる黒字倒産。破綻の原因は”カネ詰まり”だ。地方ホテルを中心に大量の物件を仕込んだものの、不動産融資の締め付けで売却先の資金調達が進まず、物件を抱えたまま立ち往生。レイコフ自身も金融機関から十分な融資を受けることができず、運転資金が続かなくなった。

「再生手続開始申立書」によると、レイコフは最後、期日白紙の小切手を複数枚振り出すことで、取引先に対して支払日の延長を懇願するようなありさまだった。一縷の望みを託して、仏BNPパリバグループ関連企業を引受先に新株予約権を発行することでいったん合意したものの、2月末に延期となり、力尽きた。

この3月には横浜市に本社を置くアジャックス(負債122億円)が倒産するなど、首都圏では中堅マンション業者の破綻が相次いでいる。今後も資金調達の道を断たれた不動産ファンド関連企業やマンション業者の破綻が避けられそうにない。
(梅咲恵司、高橋篤史 撮影:玉川陽平 =週刊東洋経済)

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