世の中熱烈なゴルフ好きが多いらしく、実に多くのことがゴルフに例えられて説明されている。
社会保険労務士試験について、学習方法をクラブに、講師や教材をコーチに、受験勉強時間を練習時間に、模擬試験や本試験をラウンドに例えて説明するウェブサイトがある。もし、この程度のことをゴルフに例えなければ理解できないというのであれば、その人は人生のすべてをゴルフに捧げているはずだ。間違いなく社労士ではなく、プロゴルファーを目指すべきだ。
四字熟語をゴルフに例えて、理解を深めようとするサイトもある。まず「水魚之交」をプレーヤーとキャディの関係だと説明する。「豪放磊落」は普段のスコアは90台だが、たまに爆発的なスコアを出すことがあり、アプローチやパッティングは冴えない人の性格だと断定する。そして「他力本願」を、賭けかたの一種である「ラスベガス」を持ち出して説明する。そしてこの説明者は、自分はいつもラスベガスでは、パートナーを頼りにするばかりだと嘆くのである。素直に辞書を引くほうが、熟語の意味を理解できるであろう。
テニスのショットを説明するために、ストロークをドライバーに、アプローチはアプローチに、ボレーはパットに例えるサイトも見つけた。
この例えでは、テニスではグリーンを自分で作らなければならないという。「グリーンにあまり寄せきれないと、パター(ボレー)は難しくなり、スイングを大きくする必要が出てしまいます」と説明される。難しすぎて、もうどうにでもなれという気分になる。
住宅ローンのコストについて、金利をプレー代に、団体信用生命保険をグリーンフィーに、保証料をキャディフィーに例えているサイトも見つけた。
実はゴルフ場利用料のほうがわかりにくい。施設管理費や厚生負担金がグリーンフィーやキャディフィーと別項目になっている理由がわからない。ロッカーフィーはロッカーを使わなければ支払わなくてもよいのであろうか。そもそもゴルフ場利用税こそが、謎そのものだ。
ところで、実に不謹慎なゴルフの例えをしたのは、先日知人女性とのゴルフ旅行を報道され、その後、健康を理由に辞任した鴻池祥肇・前官房副長官である。去る3月30日、北朝鮮のミサイル発射について「そっちへ行ったら『ファー』って感じだな」と発言しているのだ。
この人はよほどのゴルフ好きなのであろう。ゴルフで人生における大失敗を2回もしている。ゴルフ規則33の7によれば、「委員会はプレーヤーがエチケットの重大な違反に当たると考えた場合、競技失格の罰を科すことができる」とある。この人の場合、1回目で失格になっていれば、政界「ラスベガス」のパートナーだった麻生首相には累が及ばなかったかもしれない。
1955年北海道生まれ。アスキーなどを経て、91年マイクロソフト日本法人代表取締役社長。2000年に退社後、投資・事業開発コンサルティングのインスパイアを設立。趣味はジャズレコード収集やプラモデルなど多数。無類の読書家としても有名、書評も多く手掛ける。
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