プロも社会の一員 食事を通じて養う社会性

プロゴルファー/小林浩美


 いま、芝生や木々の葉は勢いよく青々と育っている。先日、友人がゴルフの途中大きな木に寄り掛かっているので、どうしたのかと尋ねたら、マイナスイオンを体にあてているとのこと。普段の生活は、電磁波が体の周りにいっぱいなので、木に取ってもらっているそうだ。これからの季節、ゴルフと森林浴は最高だ。

さて、スポーツ選手といえば体力。体力といえば食事である。私がプロ入りした1980年代半ば、試合前、自分のスタートの2時間前にはクラブハウスで朝食を必ず取っていた。いつも決まって和定食。ほとんどのプロが、宿泊や練習を共にしている先輩プロや同年代の仲間同士と一緒に食べていた。また、ラウンド後は同じ組でプレーした人たちと一緒にランチをすることが多く、気心が知れた選手同士で食べることがほとんどだった。

ところが、90年から米国女子ツアーに参戦すると、食事を一緒にする人の人選がフレキシブルに変わった。まず、朝・昼食、おやつは選手専用ラウンジがあるので、そこで食べる。そこには、4人掛け、8人掛けといった複数で囲める大きなテーブルやソファがいくつか置いてあり、似たようなスタートの時間帯の人たちであふれている。よほどそりが合わない場合は別として、誰とでも気軽に同じテーブルで食事を取る。話題によってはテーブル越しに会話が飛び交い、あっちこっちから会話に参加していた。これは日本では見たことのない風景だったので驚いた。さらに、このラウンジには専属キャディはもちろん、家族も入れず、選手と競技委員だけの空間なので、選手同士のコミュニケーションや試合で起こるさまざまな競技上の問題なども活発に議論できる場所でもある。

ここ数年、日本ツアーの食事風景は変化した。朝、昼ともクラブハウスにある食堂では、選手とその専属キャディ、マネジャー、家族などの関係者で占められているテーブル、選手とその専属キャディだけのテーブルがよく目立つ。もちろん仲間同士でいるテーブルもあるが、少なくなった。その上、コンビニのもので手軽に早く食事を済ます選手が出てきたので、クラブハウスで食事を取る人が、半数近く減ったトーナメントもある。

最近、日本でも人と人の絆が薄くなり、さらに社会における個人と組織の絆も崩れていると指摘されている。以前に比べると、選手同士の職場(試合中)での食事を通じた交流が少なくなっている。あまり自分の身内とばかり行動していては、なかなか社会性が身に付きにくい。ゴルフは個人競技である。プロゴルファーは、競技でベストパフォーマンスを出せれば、プロとしてどう生きるかは自由である。その一方、個人としては社会の一員である。これも人と人との関わり合いが少なくなっている社会の現象と直結しているのではないだろうか。

プロゴルファー/小林浩美(こばやし・ひろみ)
1963年福島県生まれ。89年にプロ初優勝と年間6勝を挙げ、90年から米ツアーに参戦、4勝を挙げる。欧州ツアー1勝を含め通算15勝。現在、日本女子プロゴルフ協会(LPGA)理事。TV解説やコースセッティングなど、幅広く活躍中。所属/日立グループ。
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