喫煙シーンに成人指定、WHO勧告は行き過ぎか 映画やドラマの「表現の自由」はどうなる?
世界保健機関(WHO)は2月1日、「喫煙シーンが含まれる映画やドラマは、若者を喫煙に誘導する効果が高い」と指摘する報告書を発表し、「成人向け」に指定する措置をとるよう、各国政府に勧告した。
WHOは、登場人物や役者の行動に影響されやすい若者が、まねして喫煙を始めるケースが多いと指摘している。また、アメリカでは、新たに喫煙者となった青少年のうち、映画やドラマが直接的なきっかけとなって吸い始めた人の割合が37%にのぼるとの調査結果を紹介している。
もし今後、日本がWHOの勧告にしたがって、映画やドラマに対する規制を設けた場合、「表現の自由」の観点から問題はないのだろうか。憲法問題に詳しい作花知志弁護士に聞いた。
「必要最小限度の制約」といえるのか
「WHOの勧告は、それ自体に法的拘束力があるわけではありません。ただ、私は、国際条約組織による勧告は、条約締約国の国内法の解釈に事実上の影響を与える存在だと考えています。それをふまえて、この問題を考えたいと思います」
作花弁護士はこのように前置きした上で、解説を始めた。
「仮に、日本政府がWHOの勧告を受けて、喫煙シーンが含まれる映画やドラマを『成人向け』に指定する措置をとったとします。それは当然、映画やドラマを発表する『表現の自由』(憲法21条)に対する制約であり、憲法に違反しないかどうかが問題となります。
表現の自由は民主制の基盤を支える人権です。それに対する制約は(1)規制の目的と(2)規制の手段について、それぞれ厳格な審査がされなければなりません。規制目的に合理性がなく、手段が目的達成のために必要最小限度だと言えない場合、規制は人権侵害として憲法違反になります。
今回のケースでみると、(1)規制目的については、未成年者の健康保護にあり、合理性は肯定されるかもしれません。ただ、(2)規制手段が必要最小限か、という点が問題だと考えます。