喫煙シーンに成人指定、WHO勧告は行き過ぎか 映画やドラマの「表現の自由」はどうなる?

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そもそも、WHOの根拠とする『登場人物や役者の行動に影響されやすい若者が、まねして喫煙を始めるケースが多い』という点は、どのような科学的根拠があるのかが問題です。

仮にそのような関係にあるとしても、たとえば、喫煙シーンのある映画やドラマについては、喫煙の危険性を伝えるメッセージを冒頭で流すなどすれば、表現そのものを制限しなくても未成年者の健康を保護するという目的を実現できるのではないかと考えられるからです。

こうしたことから考えると、今回の勧告に沿った規制が日本で実施された場合、憲法違反と判断される可能性はあると思います」

子どもの「知る権利」も制約することになる

「さらに、映画やドラマの制作者など、『発表する側』の表現の自由だけでなく、それを見る未成年者の『知る権利』に対する制限にもあたる可能性があります。

未成年者は感受性が強く、影響を受けやすいという面はあります。そのため、性的な表現や暴力的な表現については、『R-15』(15歳未満禁止)、『R-18』(18歳未満禁止)などのレイティングが定められています」

ただ、「R-15」「R-18」は、業界が定めた自主的な基準だ。業界が自主的に規制を設けている場合でも、憲法問題になるのだろうか。

「いいえ、憲法は、原則として『国』と『国民』の関係を定めた法です。業界がレイティングを定めているからといって、未成年者は当然に『知る権利の侵害だ』と主張できるわけではありません。

一方で、国が法律で規制したとしたら、やはり『表現の自由』の観点から問題となるでしょう。

性的な表現や暴力的な表現は、一度見てしまうと、その影響を取り除くことが難しいといった側面があります。一方で、喫煙シーンは、さきほど述べたように、喫煙の危険性を伝えるメッセージなどを流すことで、その影響を抑えることができる可能性があります。

喫煙シーンのある映画について、国が年齢規制を設けた場合、子どもの『知る権利』に対する必要最小限の規制と言えず、憲法違反と判断される可能性があると思います」

 

作花 知志(さっか・ともし)弁護士
岡山弁護士会、日弁連国際人権問題委員会、国際人権法学会、日本航空宇宙学会などに所属。
事務所名:作花法律事務所

 

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