物価は2016年後半から再びマイナス圏に 為替レート、原油価格から物価を推計する

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一方、2015年は円安が一服したため、足元では円安によって円建ての輸入物価が押し上げられる効果はほとんどなくなっている。

他方、同様の仮定の下では、第2主成分と連動するドル円レート(9ヵ月ラグ)についてみると、ラグをもった円安の寄与(物価を押し上げる寄与)は2016年初めがピークとなり、その後は円安効果が剥落する可能性が高い。

これらを合わせると、為替と原油のCPI全体に対しての影響が分かる。為替や原油価格による外生要因を合わせたプラス寄与はちょうど今月、2016年2月がピークで、その後はCPIを押し上げる効果は減退するだろう。

物価上昇率は反落しマイナス圏へ

輸入物価と為替変動以外の要因(賃金上昇率や国内の需給バランスなどが想定される)を不変とし、WTI原油価格が35ドル、ドル円レートが120円という前提のもとでCPIの前年同月比を試算すると、2016年2月には約プラス0.9%まで伸び率が加速するものの、その後は反落して2016年末にかけて伸び率は再びマイナスとなった。

伸び率がピークとなる2016年2月時点で、例えば原油価格が1バレル=50ドル程度に上昇し、ドル円が130円程度まで円安が進んでもCPIの前年同月比はプラス1.5%を超えない。2月時点での2%に到達する原油価格と為替レートを逆算すると、その組み合わせは原油価格が1バレル=70ドル程度かつドル円が135円程度、あるいは原油価格が1バレル=65ドル程度かつドル円が140円といった水準である。これは今の市場において現実的な水準ではない。

このように、原油価格と為替レートの前提条件を様々な水準に変更することで、CPIの伸び率を試算することができる。今後、原油価格や為替レートに大きな変化があれば、この手法を用いてCPI予測を示していきたい。

 

末廣 徹 大和証券 チーフエコノミスト

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すえひろ とおる / Toru Suehiro

2009年にみずほ証券に入社し、債券ストラテジストや債券ディーラー、エコノミスト業務に従事。2020年12月に大和証券に移籍、エクイティ調査部所属。マクロ経済指標の計量分析や市場分析、将来予測に関する定量分析に強み。債券と株式の両方で分析経験。民間エコノミスト約40名が参画する経済予測「ESPフォーキャスト調査」で2019年度、2021年度の優秀フォーキャスターに選出。

2007年立教大学理学部卒業。2009年東京大学大学院理学系研究科物理学専攻修了(理学修士)。2014年一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略・経営財務コース修了(MBA)。2023年法政大学大学院経済学研究科経済学専攻博士後期課程修了(経済学博士)。

 

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