『日本の難点』を書いた宮台真司氏(社会学者、評論家、首都大学東京教授)に聞く

--日本のあり方では、柳田國男に盛んに言及していますね。

『定本柳田國男集』が出版されているので、「風景の話」を読んで検証してほしい。生涯後期にイネの文化の本質は何であったかに議論の中心が移っていく。これは、自分たちの社会が成り立つ本質はどこにあるのかということ。公共性というのが今日的な意味では枠組みになるが、どういう道具があればみんながコミットメントするか、と考える。

それは簡単に言えば日本の場合は国土ないし国土保全。いっしょに同じ空間にずっと長くいられることから人間関係に強い関心が生じる。国土、つまり自分たちの生きている風景や風土にコミットメントする。これが日本人の生きる動機のガソリンといえる。

国土が荒廃したり、便利で、生涯賃金が高ければいつでもどこにでも移動すると思うようになれば、日本におけるパブリックコミットメントはなくなる。 

--「原点」に回帰を促す。

基本は農業振興。OECD加盟国の多くは耕地面積が6割ある。それが日本は1割をきる。日本は他の先進国より階級や宗教、血縁へのコミットメントが薄く、相対的に国土へのコミットメントが深い。日本こそ耕地面積比率が高くあるべきなのだ。これは食糧安全保障の観点からだけではない。農業は景観や人間関係を保全することにも役立つ。

農業利用の土地生産性はどこの国でも例外なく低い。それがわかっているから多くの国は、税金で農家の所得の大半を賄う。農民は国家公務員に近い。フランス8割、イギリス7割、アメリカは6割の現金収入が税金だ。農産物の価格支持はやらない。逆に所得が保証されているので農産物価格は高くしなくていい。その状況の下で貿易をするので農産物が国際競争力を持つ。

日本も四の五の言わずにそうすればいい。予算も人員も利権も張り付き総組み替えしないとやれないが、いずれはそうなる。そうならないと日本は生き残れない。

(聞き手:塚田紀史 撮影:代 友尋 =週刊東洋経済)

みやだい・しんじ
1959年仙台市生まれ。京都市で育つ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了、社会学博士。東京大学教養学部助手、東京外国語大学講師を経て、旧東京都立大学に転じ、現職。国家論、宗教論、性愛論、犯罪論、教育論、外交論、文化論などの分野で単著20冊、共著を含めると著書100冊余。


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