「横浜スタジアム」は、どう変わっていくのか 球団・スタジアム「一体運営」の狙いとは?

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長期的に安定した球団経営をやっていくには、球場と一体で進めていくしかない、という時期に来ていたんです。

プロ野球の興業で得られる収入は、チケット、飲食やグッズの売り上げ、球場の広告看板料、それにテレビ放映権料などで構成されている。このうち、球団側の収入になるのはチケット代、グッズ、テレビ放映権料。球場と球団が一体化していないと、球団側の経営努力で観客動員数を増やしても、飲食の売り上げや球場の広告看板料は球場側の収入になるうえ、球団側が球場に支払う球場使用料は外部流出してしまう。
観客のニーズをくみ取った臨機応変な施設改修や飲食メニューの導入も、球場が「赤の他人」では思うように進まない。2005年に新規参入した楽天が、宮城球場の改修費用を負担したうえで宮城県に施設を寄贈、見返りに営業権を獲得したのに続き、ロッテと広島が球場を所有する自治体から指定管理者の地位を獲得。オリックスは経営破綻した大阪ドームを買収した。この結果、もともとグループ会社が球場を所有している西武、ソフトバンク、阪神、中日を含め、12球団中8球団が一体経営になっている。

 

――議決権総数の3分の2以上を獲得したので、応募しなかった株主から、保有株を強制取得することも技術的には可能ですが、当初からそれはやらない、という方針を明確に打ち出していました。完全支配してしまったほうがやりやすいのでは?

持っていたいんだという人から、無理矢理奪い取るようなことはしたくなかったんです。株主はファンでもあります。球場を保有している横浜市も株主ですが、横浜市にはそもそも売ってくださいというお願いにも行っていません。これから一体運営をしていくうえで、重要なパートナーでもありますから。

オーナーズシートはどうなる?

――今回株を売られた株主の方のオーナーズシートはどうなりますか。

引き続きお使いいただけます。オーナーズシートは株とは別個の契約になっているので。横浜市と横浜スタジアムの賃貸契約上、賃貸期間は1978年から2023年までの45年間という契約になっていますが、オーナーズシートも45年契約になっているのです。

横浜スタジアムは横浜公園平和野球場跡地に建設された野球場で、開場は1978年3月。開場直前まで15年間にわたって横浜市長を務めた故・飛鳥田一雄氏が、自ら川崎球場から大洋ホエールズ(当時)の誘致に動いた。
建設当時は神奈川県も横浜市も財政難だったため、運営会社・(株)横浜スタジアムを設立。横浜市民や横浜市内の法人から出資を募るべく、一口250万円(1株あたり500円、1口5000株)で募集をかけたところ35億円が集まり、40億円の建設費の大半を出資で賄うことができた。その際、株主特典として付された特典がオーナーズシート。横浜スタジアムで開催される年間60試合(当時)を45年間タダで観戦できるというものだった。
このため、球団による公開買付実施直前の時点で株主総数は554名。このうち半分弱が個人で、横浜市は5.74%を保有している。スタジアムは底地が財務省の所有で、スタジアム自体は横浜スタジアムが建設したうえで横浜市に寄贈、その見返りに運営権を得る形になっている。
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