資本主義の暴走をいかに抑えるか 柴田徳太郎著 ~市場と組織を対置させる制度改革の必要性を説く
小泉-竹中の構造改革路線はアメリカのレーガン政権による規制緩和政策を輸入したものであったが、そこでは市場を善、規制を悪とした。規制のない市場は混乱をもたらすだけである。そこで市場に対して規制を対置するのではなく、市場と組織、あるいは制度を対置させ、労働市場と金融市場を中心に制度改革の必要性を説いていく。
1929年の世界大恐慌は経営者優位の労使関係、アメリカの金融制度、そして国際金本位制の不安定性という制度の欠陥によって起こったものだった。そこで第2次大戦後は労使関係、金融制度、そして国際通貨制度などの改革が行われ、それによって50年代から60年代にかけて資本主義の黄金時代を迎えたのだという。
それがさらに制度疲労を起こしたために起こったのが日本の平成不況であり、そして2007年から始まったアメリカ発の世界的金融危機である。だとすれば、今必要なのは金融制度や労使関係、そして国際通貨制度などの改革であり、それは単なる市場対規制の次元の問題ではない。
いわゆる新自由主義政策が誤った市場原理主義からこのような混乱を起こしたのだと批判するのだが、ではなぜそのような誤った政策がアメリカ、日本だけでなく世界的に採用されていったのか。
このような新自由主義政策が世界的に採用されていった背景には1970年代以来、世界的に大企業体制が危機に陥ったために、その救済策として大企業本位の政策を打ち出したことがあったのではないか。
大学生や大学院生向けに、市場と組織という原理的問題から具体的に労働市場や金融市場についてさまざまな例をあげて説明しており、複雑な経済の現状を理解するには役立つ。
しばた・とくたろう
東京大学大学院経済学研究科教授。専攻は現代資本主義論、アメリカ経済論、制度の経済学。1951年生まれ。東京大学経済学部卒業。同大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。西南学院大学助教授を経る。
ちくま新書 819円 270ページ
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