その後、やはり兼家はあのオンナと結婚してしまって、みっちゃんがしばらく眼中にない状態に。もう耐えられない! そしてここからがクライマックス。仕事と偽って大急ぎで家から出て行った兼家の後を召使につけされるとやはり、あのオンナの家に泊まっていることがわかる。
ちょっと強気に出たら…夫は浮気相手のもとへ!
もう悔しくて、やりきれない気持ちで心がいっぱいのみっちゃんだが、2、3日すると兼家が何事もなくフラッと現れるわけだ。門を叩いて、開けてもらおうとするが、みっちゃんは「開けるもんですか!」と強気に出る。すると、なんと!兼家は悪びれもせず、町の小路の女のところに行ってしまう。翌朝黙ってはいられないと思って、みっちゃんはかの有名な詩を兼家に送りつける。
いかに久しき ものとかは知る
と、例よりもひきつくろひて書きて、うつろひたる菊にさしたり。
その挑戦状をみた兼家は、待とうと思ったけど急用ができちゃってさ、という間抜けな返事をして穏便にことを終わらせようとするわけなのである。改まった口調を使うのは現代の恋人同士のケンカでもよく使う手口(経験あり)、変色した菊は彼の気持ちの変化を表している。感情的になっているはずなのに細かいディテールまで徹底していて、やりすぎ感が漂う。
このようなやり取りが2人の間で永遠と続き、21年間の慌ただしい結婚生活が過ぎていった。しかし、兼家にはいろいろと落ち度があったにせよ、そんなに悪い旦那ではなかったはずだ。当時は一夫多妻、男性が同時にいろいろなところに通うというスタイルは主流で、兼家の女遍歴など当時のスタンダードに比べるとかわいいもの。ムッとされながらもみっちゃんのもとへ21年間も通い続けたという事実はもっと評価されるべきなのでは、と思う。
でも同じ時代、そして同じ階級に生まれた藤原道綱母は、その制度をわかりながらも、やはりあきらめきれなかったのだ。彼女はウザイ女のパイオニアとして、好きな人を独占したい、愛されたいという欲望を訴え続けてきた。
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