平安美女「復讐の書」が現代女性を救うワケ 「蜻蛉日記」に詰まった恋する女の恐い本音

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話は兼家の求婚から始まる。そのときはものすごく幸せだったであろうに、それほどの熱が入っていないように聞こえる。『蜻蛉日記』全体を通して言えることだが、これは作者が明るい話題を意図的に避けて、重くて暗い話ばかりに執拗にこだわっているからだ。つまり事実を取捨選択したうえで、自分が考えたプロットに沿うように出来事を陳列している。『蜻蛉日記』はただ単に起こったことの記録ではなく、みっちゃんの頭の中に展開されている、正真正銘の物語なのだ。

新婚生活が一転、ついに浮気相手が登場!

皮肉たっぷりに初期の幸せな結婚生活の話をしばらくしてから、町の小路の女という兼家の浮気相手が登場。いよいよ物語がヒートアップしてくる。

さて九月ばかりになりて、出でにたるほどに、箱のあるを手まさぐりにあけて見れば、人のもとにやらむとしける文あり。あさましさに、見てけりとだに知られむと思ひて、書きつく。うたがはし ほかにわたせる 文見れば ここやとだえに ならむとすらむなど思ふほどに、うべなう、十月つごもりがたに、三夜しきりて見えぬ時あり。つれなうて、「しばし試みるほどに」など気色あり。
【イザ流圧倒的意訳】
さて9月頃になって、あの人が出て行った後、箱が置いてあったから、何げに開けて中を見てみると、よそのオンナに出そうとしていた手紙が入っているじゃありませんか。あきれてものも言えない……何もかもわかっているわよっ!とあの人にもどうしても知ってほしくて、手紙の端にこう書き付けてやった。「なんて疑わしい!よそのオンナにちょっかいを出しているということは、もうあたしのところへ来ないつもりってことね?(チッ)」そうこうしているうちに10月になって、そして案の定あの人が三日連続姿を見せなかった。しかも、何食わぬ顔して「貴女の気持ちを試してみようと思ってさ……」などと白々しく言うわけよ!!(ムカッ)

 

ヒィィィ!!!  みっちゃんが本性を出したわね! 一人称「あたし」、二人称「愛するあなた」、三人称「あのオンナ」という恋愛文法の代名詞が全部そろった。しかも、浮気相手はなんと「町の小路の女」という、小馬鹿にした、意地悪さがにじみ出ている呼び名……。

みっちゃんが手紙の端に書いた言葉は何の変哲もないものに見えるのだが、注釈を見ると、「疑はし」に「橋」、「文」に「踏み」を、また「手紙を渡す」に「橋を渡す」、「訪れが途絶える」に「橋が壊れて通えなくなる」の意味を掛けている。さらに、「踏み」、「渡す」、「途絶え」は「橋」の緑語……え?!そこまで!?と思うぐらい、どの言葉をとっても、その裏に見え隠れする別の意味がある。ウザさ倍増間違いなし、注釈を読んだだけでも軽く目眩がしそうな勢いだ。

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