さまざまなデザイナーが参画しているが、同社の商品は、共通してどこか温もりや愛嬌が感じられる。「恋人のようなモノを作りたい」「デザインで世の中を元気にしたい」と、名児耶社長は話すが、そういった「人を幸せな気持ちにしたい」という作り手の思いやりが、デザインの中に息づいているのだと思う。
だからこそ、同社の商品にはファンが多いのだろう。ワンコインでかわいいモノや便利なモノが入手できる昨今、「ポケット」の648円(税込)という価格は今の消費者感覚からすれば決して安くはないはずだ。にもかかわらずヒットしたのは、やはり消費者が作り手の愛を本能的に感じ取った部分も大きいのではないだろうか。
自己より他者、だから日本人のデザインは世界一
「アートは自己表現。もちろん美的造形性は重要だけど、使い手のことを考え、いろいろなものと調整して形にしていくのがデザイン。ほら、ここにも書いてある」。そう言いながら、名児耶社長は広辞苑で「デザイン」を引いた。そこには、こう記載がある。「意匠計画。生活に必要な製品を製作するにあたり、その材質・機能および美的造形性などの諸要素と、技術・生産・消費面からの各種の要求を検討・調整する総合的造形計画」。
この「使い手のことを考える」というデザインの本質は、「日本のDNA。実は日本人がいちばん得意とするところ」と、名児耶社長は力説する。東日本大震災の際、暴動も起こさず支え合ったように、日本は自己より他者を考える文化だからだ。そんな日本人のデザインは、「世界一だ」と言い切る。
今、日本は観光立国としての道を目指しているが、名児耶社長は、このデザインの力を生かしたモノ作りによって実現できないかと考えている。
同社は、これまでも企業や産地のデザイン・コンサルタントを行ってきた。たとえば、昨年は佐賀県庁の依頼で、有田焼の窯元を紹介する企画展や『きんしゃい有田豆皿紀行』という本をプロデュースしたが、これにより産地には多くの人が訪れるようになったという。「こうした人を呼び込む仕組みを全国規模で作りたい。特に重要なのはオリンピックが終わったあと。たとえば、オリンピックの跡地でデザインの大イベントをやるなどして人を呼び込めるといい」。
本連載では、モノが売れないこの時代においても支持される商品をさまざまなジャンルから取り上げているが、その共通項は、やはり「使い手のことをトコトン考えて作られている」点だと感じる。溺愛される商品には、「使い手への思いやりや愛情」が宿っているということを、あらためて確信した取材だった。
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