仁義なき牛丼戦争勃発寸前!すき家に勝算はあるのか《それゆけ!カナモリさん》

 同じ低価格商品の競争であっても、うまく棲み分けができている例もある。ファストフードではなく、アパレルの話。「ファストファッション」と呼ばれる低価格衣料の世界だ。

昨年日本に上陸して話題になったH&M、その他、ユニクロ、トップショップ、フォエバー21。いずれのブランドもお互い戦っているようで、テイストの違いで微妙な棲み分けがなされている。

しかし、牛丼は一度の食事で2杯を食べ歩くことはしない。各々のチェーンに固定的な熱心なファンもいるが、商品としての差別化要因が少なく、価格差が明確なら一般の消費者は安い方に流れる。牛丼市場において、消費者は価格に敏感なのだ。

ここでもし、利益率を保つため、吉野家と松屋が対抗しなかったらどうなるのか。顧客を奪われることになる。つまり、規模が縮小する。

先にも述べたように、利益を生むためには、規模の経済を効かせ、固定比率を圧縮しつつ、人件費は習熟度を高め効率化し、原材料費の仕入れも抑えるという変動費部分の圧縮も欠かせない。逆に言えば、顧客が奪われる、シェアが低下するということは、こうした規模の経済の効用が破綻することを意味しているのである。

記事の中で吉野家を傘下に置く吉野家ホールディングス(HD)の安部修仁社長は「値下げよりも品質を優先したい」とコメントしている。だが、コストリーダーはシェアこそが命。シェア死守のため、対抗値下げに踏み切るのは、時間の問題だろうと筆者は考える。

コストリーダーになれるのは業界で1社のみといわれる。全てのプレイヤーがプールの底で息を止めあい、一番最後までガマンして残る体力があるプレイヤーがコストリーダーだ。リーダーになれない企業は差別化戦略をとるか、独自のニッチ市場で生存領域を確保するしかない。

すき家の先制攻撃で、生き残りを賭けた息の止め合いが始まった牛丼業界。原材料の産地によるコスト構造の違いから、すき家は一気にシェア奪取し、コストリーダーの座を狙う戦略に出たのだ。さあ、吉野家は、松屋は、どうする。牛丼を食べながら、戦いの行方を見守ろう。

 

《プロフィール》
金森努(かなもり・つとむ)
東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道18年。コンサルティング事務所、大手広告代理店ダイレクトマーケティング関連会社を経て、2005年独立起業。青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。
共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。
「日経BizPlus」などのウェブサイト・「販促会議」など雑誌への連載、講演・各メディアへの出演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。
◆この記事は、「GLOBIS.JP」に2009年4月24日に掲載された記事を、東洋経済オンラインの読者向けに再構成したものです。

 

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