注目の金融政策、日銀とFRBはどう動くのか 中央銀行ウォッチャーの加藤出氏に聞く

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実際に、今、マイナス金利を導入しているデンマーク、スイス、スウェーデンなどでは銀行の収益が苦しくなっている。スイスは通貨スイスフランの高騰を避けるために導入しているが、スイスの公的年金は運用難となり、去年の春にコモディティや新興国の国債を買った。今回の下げでは相当に影響を受けているはずだ。そうなると、国民も将来が不安になり、低金利政策を行ってもかえって消費が高まらない。マイナス金利政策を新たなフロンティアのようにいう人もいるが、歪みの大きすぎる政策だ。

追加緩和で外国人投資家の絶好の売り場に?

――追加緩和の効果も疑問視されていますね。

黒田バズーカ第2弾でマネタリーベースは2014年10月末の260兆円から現在360兆円近くまで増加したが、日経平均株価はこの間、1万6000円から2万円を超えるところまで上昇したたものの、足元ではスタート付近の1万6000円に戻ってしまっている。マネタリーベースを増やしたからといってその効果はどうなの?という疑問が出てくる。

そもそも、金融政策はアベノミクスの第一の矢、露払い役に過ぎず、成長戦略などがついてこないと息切れしてしまう。これまでは円安と海外経済の回復で覆い隠されていたが、もはや効果がないと分かれば、追加緩和による一時的な株価の上昇は外国人投資家に絶好の売り場を提供するだけとなってしまう。

――FRB(米国連邦準備制度理事会)は昨年12月にようやく利上げに踏み切りました。FOMCメンバーの見通しでは今年、年4回の利上げ予想となっています。

もともと利上げを年4回やるというのは、FOMCメンバーとしても観測気球の面があると思う。実は、2014年12月時点での2015年の利上げペース予想が年4回だったが、結局、12月にようやく1回しかできなかった。ドル高が進むようであれば、それに応じて回数を減らしていくだろう。

セントルイス地区連銀のブラード総裁がタカ派の最右翼であるにもかかわらず、インフレ期待が低下していると懸念を示している。今週のFOMCの声明文にも、そうした表現などで「3月はさすがに見送るのかな」というというニュアンスが出てくれば、株式市場はそれだけでも一安心するだろう。ただし、米国経済がよくないから利上げができない、という話になってしまうと、それも逆に不安のタネとなる。今回はまだ、市場の混乱が反映されたハードデータが出ているわけではないので、「慎重に見極めます」というような書きぶりにとどまるだろう。

年4回の利上げを実施すれば、ドル高が進んでさらに企業収益が圧迫される。また、自動車販売の好調が続いてきたが、自動車ローンは短期の金利に連動するので、年4回も利上げすれば影響が出る。エマージング諸国のリスクが火を噴く可能性もある。今の原油安も年4回の利上げ観測による調整が働いているといえる。年に2回か3回利上げできればラッキーというところではないか。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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