注目の金融政策、日銀とFRBはどう動くのか

中央銀行ウォッチャーの加藤出氏に聞く

かとう・いずる 1988年、横浜国立大学経済学部卒業、東京短資入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを2001年まで兼務。02年2月よりチーフエコノミスト。13年2月より東短リサーチ代表取締役社長。短期金融市場の現場から各国の金融政策を分析。『日銀は死んだのか?』『バーナンキのFRB』『日銀、「出口」なし! 異次元緩和の次に来る危機』 など著作多数

ETF(上場投資信託)の買い入れ額を増やすという可能性はあるものの、筋のよい政策ではない。

2014年10月末の黒田バズーカ第2弾以降の日経平均の上昇分は足元ですでに剥がれ落ちているので、この間に日銀が購入した分は平均コストからすると損失になっている。ほかに株を買っている中央銀行はない。買ったものをどう整理するのかは悩ましい問題だ。

ただ、緩和メニューの皿数と中身がともに苦しくなっているので、ETFの買い入れ増額を行う可能性もないとはいえない。

巷間指摘される「超過準備預金の付利金利の引き下げ」という手段はとらないと思う。10ベーシス(0.1%)を5ベーシス(0.05%)に下げる余地があるという指摘があるが、一回下げると市場は「日銀がマイナス金利を視野に入れた」と見てマイナス金利を早々に織り込みに行く。

日銀がマイナス金利政策を採用しないワケ

日銀の貸出支援策を使って、民間銀行が数十兆円のカネを日銀から借りているので、マイナス金利政策が導入されれば、マイナス金利のつく超過準備から返そうという話になってしまう。そうなれば、全体の資金供給量を増やそうという現在の日銀の政策とは矛盾する。

付利を引き下げるなら、政策の枠組みを従来とはガラリと変えて、マイナス金利政策に突っ込むという覚悟をするという話になる。こうした政策の採用がありうるとすれば、世界経済が失速して、米国も利上げどころか緩和に逆戻りする、といったリスクシナリオが実現してしまった場合だろう。

よく、ECB(欧州中央銀行)はマイナス金利政策を採用しているではないか、という議論があるが、日銀とECBでは状況が異なる。超過準備の対名目GDP(国内総生産)比を見ると、2015年末でECBは7〜8%で、日銀は50%近い。2017年末になるとECBは12〜13%になるが、日銀は80%近くになる。ECBと異なり、日銀は明確にマネタリーベースの量を目標に掲げて国債の買い入れをしているからだ。これだけ巨額な超過準備にマイナス金利がかかると、民間銀行に与える影響ははるかに大きい。銀行株が売られてしまうリスクがある。

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