スズキの攻勢に冷や水、GM不振の「足かせ」
逆風下の自動車産業でスズキの健闘ぶりが目立っている。2008年10月以降マイナスが続いたインド市場での新車販売は年明けから好転。減税や銀行による自動車ローン引き締め緩和が追い風となり、「スイフト」「Aスター」といった上級小型車が人気を博している。
3月は前年同月比15%増の7.4万台と最高記録を更新。シェア5割を握るトップ企業の存在感を見せつけた。
日本でも軽自動車が牽引し、08年度新車販売台数はトヨタに次ぐ2位に浮上した。
売る車がない店も
だが、最大市場の米国での様相は一変する。08年度販売台数は3割減の7万台強。シェアは1%に満たず、2輪車も低迷している。商品力不足に加え、長らく提携関係にあるGM(ゼネラル・モーターズ)の再建問題がここに来て想定外の負担となっている。
米国の販売ディーラーは商品在庫を担保に金融会社から仕入れ代金を調達している。多くのスズキ系ディーラーはGM系のGMACにこの在庫担保融資を頼ってきたが、今回のGM救済策の一環でGMACは銀行持ち株会社化され、政府支援が入った。その結果、銀行法の下で、貸倒率が高いと思われるディーラーから在庫を引き揚げ始めたのだ。売る車が店頭からなくなったスズキディーラーもあるといわれ、販売減少に拍車をかけている。
さらに、GMの連邦破産法11条適用もにわかに現実味を帯びてきた。「100%ありえない」とスズキの鈴木修会長兼社長は豪語してきたが、軟着陸を目指したオバマ政権は、遅々として進まないリストラにしびれを切らしている。GMが保有するスズキ全株を売却した昨秋以降も、両社は共同研究や共同購買を続けている。スズキの貸借対照表には、カナダのCAMI(カミ)工場への出資金150億円超を筆頭に、GM株、GMベネズエラや独オペルへの売掛金も存在する。破産法適用となればスズキも無傷ではいられない。
スズキは昨年6月に670人いた米国の現地従業員を1割削減し、組織も大幅改編した。それでも北米部門は08年度第3四半期時点で93億円の営業赤字。4月に入ってさらに15%の人員削減に踏み切り、止まらぬ販売減と追いかけっこを演じている。
鈴木会長は「自動車会社にとって米国は世界のサンプルだからチャレンジする意義がある。日本ならやはり東京でビジネスをしたいというのと同じ」と発言してきた。だが米国市場はピークだった07年水準には12年まで戻らないといわれ、こだわる理由は少なくなっている。08年度の決算発表が迫っているが、鈴木会長はこれらの“不安”にどう答えるのか。
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