ブラジルに賭けた川重、「221億円損」の裏目 原油安が直撃、掘削の継続に勝算はあるか

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旅客機胴体の生産は好調だが、海洋掘削船の損失に足を引っ張られる(撮影:今井康一)

これでウミ出しとなるのか――。川崎重工業は14日、ブラジルの造船事業に関連して、2015年第3四半期(4~12月)に221億円の損失を計上すると発表した。

ブラジルの汚職問題に絡み、現地企業との合弁会社、エンセアーダが受注したドリルシップ(海洋掘削船)2隻の建造工事代金が1年以上支払われない状況が続き、同社が経営難に陥ったためだ。

ドリルシップの建造は川崎重工業が請け負っており、2015年に引き渡し予定だった1番船はほぼ完成、2番船も5割程度まで進捗していた。だが早期の入金再開が見込めないことから同年11月にエンセアーダと工事中断に合意し、損失処理を行うことになった。

保険が効かず、損失が膨らんだ

損失の内訳は、エンセアーダへの出資金、貸付金の評価損28億円とドリルシップ関連の売掛金、仕掛品の評価損192億円。NEXI(日本貿易保険)の輸出保険で一定額を賄える見通しだったが、「見解の相違があり求償できる可能性が低い」(広報)ことから損失額が膨らんだ。なお、ほぼ完成済みの1隻については50億円程度の回収可能性があるとして、その分は損失処理から差し引いた。

川崎重工業がブラジル事業に参入したのは2012年のこと。超深海の巨大油田開発を進めていたブラジル政府の協力要請を受け、現地の建設大手3社が設立したエンセアーダに3割出資した。2013年にはエンセアーダが国営石油会社、ペトロブラス向けドリルシップ6隻を受注。そのうち2隻の船体部などを川崎重工業が引き受け、坂出工場(香川県)で建造していた。

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