あの新幹線メーカーが大赤字に陥った事情 鉄道車両の海外生産に潜む「リスク」とは?

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日本車輌が米国向けに製造している、2階建ての鉄道車両

2015年度第2四半期(4~9月期)決算で売上高、営業利益、純利益がいずれも過去最高。空前の好決算に沸くJR東海に、一点だけ死角があった。車両製造を行う子会社・日本車輌製造である。

JR東海とは対照的に、同じ期の売上高は2ケタ減。純利益は前年同期の11億円の黒字から、100億円の赤字に転落した。JR東海の同じ期の純利益は1957億円。グループ全体に与える影響は限定的ではあるものの、今後のJR東海の戦略を考えるうえで見過ごせない問題が潜んでいる。

JR東海との浅からぬ縁

日本車輌は1896(明治29)年設立の老舗鉄道車両メーカーだ。新幹線は初期から製造を手掛けており、川崎重工業や日立製作所という国内2強を差し置いて、累計製造数3000両を最初に達成した。しかし、国内の鉄道車両製造が頭打ちになる中で、車両メーカーは軒並み業績が悪化。2007年度には54億円の最終赤字に陥った。

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初期から新幹線車両も多数生産してきた

そこへ手をさしのべたのがJR東海だった。東海道新幹線に加えてリニア中央新幹線の開業も控える同社は、設計・製造から保守まで一体で技術力を高めることが必要と考えたのだ。

日本車輌の本社も愛知県名古屋市にあり、JR東海とは地理的なつながりも深い。日本車輌の豊川工場からJR東海の浜松工場までは40キロメートル程度しか離れていない。車両運搬にかかるコストも安く済む。

2008年にJR東海は日本車輌の株式50.1%を取得し、子会社化に踏み切った。その後、新幹線発注を大きく増やし、同社の経営は息を吹き返した。

JR東海への依存度が高まる一方で、JR他社との取引は相対的に減った。かつてはJR東日本の新幹線車両も製造していたが、最新鋭の北陸新幹線E7系の製造会社の中に同社の名前はない。

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