東京の地下で進行する「メトロ大改造」の中身 混雑と遅延の緩和を狙いインフラ強化

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現在の東西線木場駅。今後の工事では、左上に見える円弧状のブロック(セグメント)を解体し、ホームを広げる

東京の地下鉄で大改造計画が進行中だ。新線建設が一段落したいま、既存路線の機能を再構築する工事がすでに始まっている。

東京地下鉄(以下東京メトロ)は、東京の地下鉄9路線を運営しており、副都心線を最後に新線建設を終え、既存路線の改良工事の対象を「点」から「線」に移した。駅などを部分的かつ個別に改良していた時代から、路線全体を集中的に改良する時代に入り、まさに大改造と言える大規模な改良工事をすることになったのだ。

では、なぜいま大改造が必要なのか。東京メトロの取締役で改良建設部長の野焼計史氏は、大きな課題である混雑の緩和や遅延の抑制を実現するには、部分的な改良だけでは不十分で、路線全体を大改造するしかないと語る。

今の施設では、さばききれない

混雑や遅延の大きな原因は、既存の鉄道施設ではさばききれないほど利用者数が増えたことだ。東京の地下鉄網は、戦前に開業した銀座線を除けば、戦後に山手線などの地上の鉄道の混雑を緩和するとともに、渋滞が慢性化した路面交通を救済する目的で計画され、建設されてきた。ところが東京都や首都圏の人口はその後も増加し、地下鉄の利用者も大幅に増えた。

たとえば東西線は、国鉄(現JR)中央・総武線の混雑緩和を目的として計画されたバイパスで、開業後に利用者数が増え続けた。とくに顕著だったのが江東区から千葉県にかかる地上区間で、蓮田しかないと言われた沿線は住宅地に変貌し、人口が増えた。千葉県側の相互直通運転は、当初は国鉄総武線、のちに東葉高速鉄道とも実施し、列車が直通する範囲が広がった。

その結果、東西線の1日の利用者数は全線開業時(1970年度)の約1.8倍に膨れ上がり、東側の地上区間から都心に向かう列車の混雑率が同社最高の200%に達した。混雑のため、駅での停車時間がダイヤ通りに収まらず、遅延がたびたび起きる。

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