私の感覚だが、何かキナ臭い空気がジブチに漂っていた。米中の軍拡合戦が始まろうとしている気配がしていたからだ。海賊被害がなくなってきたのに、日本を含む各国がどうして軍事施設の強化に走るのかがわからない。経済支援での程よい競争はおおいに結構だが、軍事基地を巡る衝突は米中対立の火種になりかねない。ジブチ情勢を注視したい。
新植民地主義を狙っている中国
ところで、読者の皆さんは、中国がぶち上げた海と陸の新シルクロード「一帯一路」構想をご存じだろうか。中国から欧州に至る2つのルートからなるもので、地域経済や文化交流を促進する狙いがある。この海のルートに、アフリカも入っている。そのことを中国はアフリカ連合(AU)との覚書で表明した。
現在、アフリカ全土の中国人駐在員の数は100万人との報告がある。ちなみに、エチオピアの人口は9000万人(アジスアベバ350万人)で中国人は9万人(日本人は200人だ)。ジブチの中国人は現在1万人で、10万人規模になるのは時間の問題だと言っている人もいた。
エチオピアは植民地になったことのない唯一のアフリカの誇り高き王国である。20年ほど前までは、日本はエチオピアから感謝された歴史を持つが、いまや中国の経済援助や投融資の規模が桁違いであるために、すっかりかすんでしまった。その一例が、中国がプレゼントした20階建て100メートルの高層ビルで、2012年に完成したアフリカ連合(AU)の新本部ビルである。
中国人とアフリカ人に共通するところ
アフリカ人と付き合っていると、イヤな思いをすることも多い。われわれ日本人にとって最もイヤな部分は、ルールを無視する傾向があることだ。ある意味では、中国とよく似ている。たとえば、アフリカでは列に並ばない人や、子供じみた人を見かけることが多い。飛行機の座席が指定されているにもかかわらず、それを守らないといった具合だ。ルールを守らないからますます混乱するのに、「ほかの人もルールを守らないから自分も守らない」となる。都合が悪いとすぐウソをつき、ウソがばれるとウソの上塗りをするような人も見かける。
アフリカ人は中国人が嫌いだが、実は中国人もアフリカ人を好きなわけではないようだ。中国人労働者がアフリカに多く来るのは、中国プロジェクトでアフリカ人の労働者がなかなか働いてくれないからという面もある。初めはやる気がないように見えるのだ。ただし、タンザニアの鉄道プロジェクトの現場では、いまや中国人労働者は少なく、タンザニア人の労働者が圧倒的に多くなった。アフリカ人の技術力が向上すると、アフリカ人に仕事を任せている実例はいくらでもあることを指摘しておく。
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