ベストセラー生む名文家たちの「書く技術」 「嫌われる勇気」からジブリまで
小さな子どもがどうやっても脱げない服に悶絶(もんぜつ)する様を描いて話題の、ヨシタケシンスケ氏の絵本『もうぬげない』。この本のPOP(ポップ)に彼女が書いたのは、「ぬげないよ~」。
伝説の「神の手」系POP書き手
河又さんは、自作のPOPを出した途端にその本の周りに人が集まるという伝説があるほど、「神の手」系のPOP書きとして知られる。全国のリブロ店員が応募する社内POPコンテストで入賞したこともあるという。
文章を書くのも、絵を描くのも大好き。学生時代は手紙を書くのが趣味で、友達に何十枚もの手紙を書いては送っていた。
「でも、ここで書くPOPはそれとは別のもの。本ってどれもプロのデザイナーが装丁しているのに、ただ置いてあるだけでは埋もれてしまうことも少なくない。だからお客さまにその存在に気づいてもらうためにPOPを作る。書くコピーは、一瞬で目に入る短文に限られます」
コツは、決して説明しないこと。「人の温かさがしみじみ伝わるすばらしい本です」と書くより、「すごい!」の一言のほうが効果がある。
また、感情だけで物を言ってもいいのがPOPの世界。
「かわいい!とか、なんだこれ?とか、自分がその本に最初に触れたときの引っかかりを、そのままコピーにすることが多いですね。アルバイトの『専門書なのに読みやすい』という独り言を使わせてもらったこともあるんですよ」
文字の書き方にもPOPならではのコツがある。キレイに印刷された帯と共に置かれるので、わざと崩したり斜めにしたり。いわゆる「抜け感」を大事にしているという。
河又さんのPOPが瞬発力で人々の心を動かすとしたら、配慮の行き届いた、じわりと心に響く文章を紡ぎだすのが4人目の先生、「プロの代筆屋」中島泰成さん(36)だ。