ベストセラー生む名文家たちの「書く技術」 「嫌われる勇気」からジブリまで

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そんな理論的で、説得力のある文章は、具体的にどうすれば書けるのか。古賀さんが大切にしているのは、文章中に「主張」「理由」「事実」の3要素を入れていくことだという。

「主張とは、核になるメッセージ。続いて、その主張を述べる理由と、理由を裏づける客観的な事実を入れていく。この3要素がそろっていると、論理的で、説得力のある文章になります」

たとえば、「大相撲もナイター制を導入するべきだ」と主張するとしよう。これだけでは、なぜナイターなのかがよくわからない。

そこで「平日でも、仕事帰りに見に行ける」という理由と、この理由の正当性を客観的に裏づける、「野球やサッカーもナイター制を導入している」という事実を追加する。

起承転結ならぬ、「起『転』承結」

ノートにもテーマごとに同じ色の付箋。構成の際に役に立つ(撮影/今村拓馬)

確かに「相撲のナイター」は意外な主張だが、理由と事実を聞けば納得できる。古賀さんによれば、日常的に見かける短い文章でこの3要素がそろっていることは少ないという。

さらに、論理的な“正文”をおもしろくするテクもある。「起承転結」ならぬ「起『転』承結」の構成だ。

「起承転結は、後半にどんでん返しが待っている、漫画や小説に向いた構成です。企画書やプレゼン資料などのビジネス文書では、起『転』承結として、早めにどんでん返しの驚きを持ってくる。読み手の興味を早々に引きつけ、自分の主張に耳を傾けてもらうのです」

そして最後に、徹底的な推敲(読み返し)が必要だという。

「誤字脱字はもちろん、文章のリズムを確認するためにも、音読しながらの推敲は、絶対に欠かせない作業です。ワープロソフトで書く場合は、テキストのフォントを明朝体からゴシック体に変えてみたり、横書きを縦書きに変換したりして読み返すだけでも、違った角度から読み返すことができますよ」

帰って、自分が書いた短い原稿をチェックしてみた。3要素、ぜんぜんそろってません……って、早く言ってよ、な思いを胸に、次の先生のところへ。

メールの達人、日本ビジネスメール協会代表理事で、メールの書き方本も数多く出している平野友朗(ともあき)さん(41)がその人だ。

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