ゆうちょ銀が限度額の引き上げで背負う難題 貯金限度額1300万円への増額を喜べない
全特は引き上げ額が300万円では「大幅に不足」としつつも、引き上げの審議結果が示されたことは「評価する」とコメント。民営化委の増田寛也委員長が「次の段階の緩和の検討については、1〜2年ぐらいのイメージを持っている」と語り、さらなる引き上げの可能性を示している。
一方、民間金融機関も、歩み寄りを示す。7団体の共同声明は、懸念を述べつつも、「私どもの強い懸念を一定程度共有いただいたものと理解している」と評価した。
今回話がまとまったのは、引き上げ額が300万円に収まり、前回のようなゆうちょ銀行への資金シフトは起きないと考えられるからだ。
貯金限度額引き上げで、コスト負担も増加
前回の引き上げ時に資金シフトが起きたのは、民間金融機関よりゆうちょ銀行の金利が高かったことが大きい。
現在、両者には金利格差はほとんどない。実際、ゆうちょ銀行の長門正貢社長も「限度額が300万円増えたからといって、金利上乗せなどの特別なキャンペーンはやらない」と明言する(写真)。
それよりも長門社長は「4月以降、投資信託の販売にかかわるインセンティブ(報奨金)を、強力につける。投信の販売を担うフィナンシャルコンサルタントも、従来計画より100人増員して17年度1300人体制にする」と、投信販売に力を注ぐ計画だ。
超低金利が続く中、貯金で集めたおカネを運用するよりも、投信販売で得る手数料のほうが収益性は高い。
貯金の限度額引き上げはゆうちょ銀行にとって、むしろコスト増要因になりかねない。現在、限度額を超えた貯金は、利子のつかない振替貯金に入っている。
振替貯金残高11兆円の大半を占めるとみられ、利子のつく貯金に預け替えられるだけで、ゆうちょ銀行にとっては数十億円の利払い負担が増す。また大量の資金シフトが起きれば、再び「民業圧迫」の反発も呼びかねない。
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