これらの記事をご覧になればご理解いただけるように、今年の本当のリスクとは、決して地政学リスクなどではなく、さまざまな「累積した過剰の清算」が始まったと見るべきなのではないでしょうか。そして、それらの過剰の清算が始まるという引き金を引いたのが、紛れもなく米国の利上げにあったのではないでしょうか。
物事の本質を見極めるためには、すでに世の中で知られている常識や他人の考え方に染まらずに、「自分の頭でしっかりと考える」ということが求められています。見かけ上もっともらしく見える常識的な考えや他人の見解を、そのまま自分の考えに取り入れるようなことをしていては、自分の考えが狭く、浅いものになってしまいます。
個人投資家が注意しなければならないこと
前回の記事で、「自分の軸となる考えを持っていれば金融大手の言動に惑わされないという典型例を、私自身の経験談から述べたい」と申し上げましたが、ここでは自らの為替取引で最近あったことについて述べたいと思います。
私がドルに集中投資を始めたのは2012年12月のことになります。私の当時の考えは「FRB(米連邦準備制度理事会)の量的金融緩和政策第3段(QE3)開始によって、円高トレンドが終わりに近づいていく」というものでした。そのような状況下で、衆議院選挙の公約として、自民党、日本維新の会、みんなの党など主要な政党が日銀に対して大規模な金融緩和を求めているのを見て、2013年は円安トレンドへの転換が始まると実感したのです。
この時は一切の迷いがなく、大胆なドル買いができました。その後、安倍政権が誕生し、日銀が大規模な金融緩和を行うことによって本格的な円安トレンドがスタートしたわけですが、当時の私はターゲット・プライス(目標値)というものを考えることはありませんでした。「できるだけ長く、このトレンドに乗っていこう」と思っていたのと同時に、「トレンドの転換点はどういったタイミングでやってくるのか」ということだけを論理的に考えていこうとしていたのです。
その後、2014年10月に日銀が追加緩和をした後のドル円相場の推移を見ながら、米国の利上げが円安トレンド転換のタイミングになるだろうと考えるようになりました。そのように考える根拠については、拙書やこの連載でも再三述べてきたので割愛しますが、FRBの政策を実質的に決定しているニューヨーク連銀のダドリー総裁が利上げを支持するという発言を受けて、私は2015年12月のFOMC前にドルをすべて123円台で売却することができました。
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