「本質」を読み解けば、市場は予想できる 金融機関の予想に振り回されないために

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しかしそれまでに、少なくとも3回は某外資系銀行(現在は邦銀により買収されている)の余計なアドバイスが雑音として入ってきました。私の記憶が正しければ、100円に達しようとする局面と110円台に乗せた局面で、「当行の予想では、今後は円高に振れます」といったアドバイスを受け、ドルを売却するように勧められました。さらには、昨年12月にドルを売却しようとした時には、「当行の予想では、今後も円安が進みますが、本当に売却されるのですか」と2回も念押しされました。

そこで思ったのは、ある程度は経済の大きな流れをとらえていて、なおかつその流れに沿った戦略を持っていない限りは、ほとんどの個人投資家が銀行・証券のアドバイスに従ってしまうのではないかということです。確かに、結果的に自分の考えより銀行・証券の予想のほうが正しいというケースもあるかもしれません。この銀行の場合も、たまたま3回すべての予想が外れただけなのかもしれません。しかしそうはいっても、この銀行の予想は、どのケースでも論理的な裏付けに乏しく、腑に落ちないあいまいな予想にすぎなかったのです。

必要なのは常日頃から検証していく姿勢

そういった意味でも、私たちは物事の本質や過去の歴史に照らし合わせながら、流動的な政治・経済・市場の予測を試み、予測が当たらなかった時は反省点を検証するといった試行錯誤を繰り返していく必要があります。
また、移り変わりが激しい今の世の中で、何が有用な情報で、何が役に立たない情報なのか、常日頃から検証していく姿勢も求められています。

今の経済メディアでは、なぜ予測が外れたのかを検証せずに、後付けの講釈をしてごまかしてしまう方が実に多いと思います。アベノミクスの失敗をすべて消費増税のせいにしたり、株安・円高の要因を「地政学リスク」などで片付けてしまうのは、その典型例といえるのではないでしょうか。

もちろん、私はこれまでの経験により、経済の予測よりも市場の予想のほうが、非常に難しいと感じております。さらには、市場の予想のなかでも、為替市場より株式市場の予想のほうが、ずっと困難であると悟っております。

ですから、市場の予測などはやめて、経済の予測だけをしていれば非常に楽な仕事ができると思っております。ところがその一方では、今の経済メディアではあまりにも予測の検証がなされていないため、「試行錯誤を繰り返す経済アナリスト」として先駆者になりたいとも考えております。

今のところ、私は後者の思いのほうが強いため、「外れるかもしれない」というプレッシャーに負けないような心を持ちながら、市場の予想もこの連載やブログなどで取り上げていきたいと思っております。

中原 圭介 経営コンサルタント、経済アナリスト

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なかはら けいすけ / Keisuke Nakahara

経営・金融のコンサルティング会社「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリストとして活動。「総合科学研究機構」の特任研究員も兼ねる。企業・金融機関への助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済教育の普及に努めている。経済や経営だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析しており、その予測の正確さには定評がある。「もっとも予測が当たる経済アナリスト」として評価が高く、ファンも多い。
主な著書に『AI×人口減少』『これから日本で起こること』(ともに東洋経済新報社)、『日本の国難』『お金の神様』(ともに講談社)、『ビジネスで使える経済予測入門』『シェール革命後の世界勢力図』(ともにダイヤモンド社)などがある。東洋経済オンラインで『中原圭介の未来予想図』、マネー現代で『経済ニュースの正しい読み方』、ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』を好評連載中。公式サイトはこちら

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