【産業天気図・工作機械】足元は過去最悪の受注状況。09年度は大半が赤字濃厚

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  09年4月~9月   09年10月~10年3月

企業設備投資の動向を占う工作機械産業では、業界内外でささやかれてきた軟化予想を遙かに超えるペースで最悪の事態が進行している。業界団体・日本工作機械工業会が先ごろ公表した2月受注額は204億円で前年同月比、実に84.4%減。前回08年12月の本特集は62.1%減だった08年11月受注を基に、当面は「氷河期」と予測したが、業況は一段と悪化している。
 
 月次受注は12月以降も減り続け、年明け1月には統計上比較可能な1988年1月以降、初めて200億円を割り込む84.1%減の190億円を記録。続く2月はかろうじて200億円台に戻したが、毎月1300億円以上が恒常化していた07年~08年初に比べれば「底ばい状態に変わりはない」と中村健一・日工会会長。前年同月比の下落幅としては4カ月連続で過去最大を更新した。
 
 2月受注の中身を見ると、内需は83億円で86.2%減、と13カ月連続のマイナス。自動車関連が前月比で見れば5カ月ぶりのプラスとなったものの誤差の範囲内で、実質的には全業種低迷。一方、外需は前年同月比82.8%減の121億円で9カ月連続のマイナス。前月に比べれば22億円持ち直したが、国・地域別で特段の改善の兆しは見当たらなかった。
 
 では、今後はどうなるのか。4~6月受注見通しに関する日工会の会員アンケート(3月上旬実施)によると、「増える」との回答が4.5%、「保ち合い」が48.5%、「減る」が47.0%。前回昨年12月実施の1~3月見通し調査では74.2%が「減る」との悲観派だったので、今回は「減る」から「保ち合い」へ30ポイントほどシフトした形となった。つまり、5割以上の社が「これ以上の悪化はない」との見方を示した、というのが日工会サイドの解釈だ。
 
 ただ中村会長自身、「それほど4~6月が明るくなるとは思っていない。キャンセルが3月までに出尽くすという点がプラスになる程度」と説明。「この調子では、あと数カ月で受注残が払底する」(業界筋)との懸念まで聞こえてくる。実際、主力先の行方については「建機の生産レベルは9月でも5割に届かないと見る向きもあり、まだ設備投資とまではいかないようだ」(日工会幹部)、「自動車産業の行方が最も心配。回復には時間が掛かるかもしれない」(中村会長)など不透明感が依然として深まっている模様で、ユーザーの投資意欲が回復する気配は、まだうかがえない。
 
 こうした過去最悪の受注減を踏まえ、今月16日発売の「会社四季報」春号は森精機製作所<6141>やオークマ<6103>、牧野フライス製作所<6135>などの業界大手でさえ、ここ数年の活況で膨らんだ固定費の圧縮努力が急激な減収に追い付かず、09年度は赤字(ないし赤字継続)になると予想している。各メーカーは操業度の低下した工場で次の拡大期に備えた社員教育等に注力中だが、そうした地道な努力がいつ結実するかは、予断を許さない。

(内田 史信)

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