市場心理は実態以上の不安感に囚われている 売られすぎが売られすぎを呼ぶ過剰反応

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1月8日、取引停止制度停止を好感し、乱高下の末に反発した中国株(写真:AP/アフロ)

世界の株式市場や外貨相場(対円)は、売られすぎがさらなる売られすぎを呼んでいる。

年末年始の雰囲気は大変暗かった。2015年年間の米S&P500指数は、前年末比で0.7%下落した。大統領選挙の前年は株価が上昇するというジンクスがあり、1951年以降で調べると、例外的にS&P500指数が下落したのは2011年だけだった。しかも2011年の下落率はわずか0.002%で、ニューヨークダウ指数は上昇している。昨年はニューヨークダウも下落した。

日本では、今年は大発会以来5営業日連続で日経平均が下落した。戦後初だそうだ。日米の経済や企業収益の実態が悪化しているわけではない。先週1月8日(金)発表の12月分の米雇用統計も、非農業部門雇用者数の前月比は29.2万人増と力強く、10月分も11月分も上方修正されている。

しかし市場は、実態からかけ離れた不安にとらわれている。「ここまで大きく株価が下落したのだから、さらに下がるに違いない」「株価下落は経済実態が大きく悪化するということを正確に予言している」といった説が投資家に信じられやすくなり、さらなる売りを呼んでいる。こうした展開を、筆者はまったく予想できなかった。読者の皆様に多大なご心配をおかけしていることを、深くお詫びしたい。

米金融政策を巡る行きすぎた見解

市場の動きが実態とかけ離れていると述べたのは、米雇用統計だけではない。米国の金融政策を、過去、あるいは今後の株価下落要因(特に新興諸国に対する打撃)に意味付ける主張をよく耳にする。確かに、米ドル建て債券の利回りが上がることは、他の資産にとってマイナス要因ではある。

しかし、カネ余りかどうかを考える上で重要なのは、マネタリーベース(中央銀行がばらまいた資金の量)ではなく、M2などのマネーストック(経済全体に出回っている資金の量)だ。米QE3(量的緩和第3弾)前後のマネタリーベースの前年比は、昨年は一時マイナスに落ち込む局面もあった。これに対してM2の前年比は、QE3の間は7%前後、そして今でも6%前後で、安定した伸びを続けている。つまり米経済全体のカネ余り度合いは、QE3前後でほぼ変わってない。

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