コロナ禍の今こそ問われる「プロ野球の真価」 阪神の藤浪は世間から大きな批判を浴びたが

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球団事務所で記者会見する阪神の藤浪晋太郎投手。4月23日、兵庫県西宮市(代表撮影)(写真:共同通信社)

新型コロナウイルスの蔓延によって、「自粛」を余儀なくされている人々のストレスは、日に日に高まっているように思える。プロ野球で言えば、阪神タイガースの藤浪晋太郎をめぐる話題なども、社会のストレスの高まりによって大きくなった感がある。

新型コロナウイルスの感染から回復した藤浪は、4月23日に会見を開き、公の場で初めて謝罪と反省を口にした。彼は3月27日に他の阪神2選手とともに陽性が判明し、4月7日まで入院していた経緯がある。退院後2週間の自宅待機を続け、会見を開いたのであった。

3月末にプロ野球選手として初の陽性を公表した時点では、彼が進んで名前の公表に同意したことが称賛された。社会に新型コロナウイルスの恐ろしさを啓蒙するうえで有益だとされたのだ。

藤浪が浴びた猛烈なバッシング

しかし、藤浪ら阪神選手が3月半ばに大阪市内で会食していたこと。そこに女性などが同席したことが後からわかって、社会の反応は一変する。「この非常時に合コンか」と非難されるようになったのだ。実際には大阪の「タニマチ(旦那衆)」による接待だった。タニマチとその仲間が、所有するマンションの一室に阪神の選手らを招き食事会をしたものだったようだ。

平時であればごくありふれたオフの一日だったはずだろう。しかし世間は気が立っている。「未成年女性が同席して飲酒していた」などのデマも混じって、藤浪を非難する論調が目立つようになった。

確かにこの時期にこういう会合を持つのは不謹慎かもしれない。だが、緊急事態宣言が発出される3週間前の段階では、こういった「濃厚接触」は日本中で見られただろう。しかし人気球団の選手だけに、藤浪への風当たりは強かった。「放出決定」など、何の関係があるのか理解に苦しむ記事も出た。

そして球団の「監督責任」を問う声も頻出した。球団は当初、藤浪がどんな会合に出ていたかを把握していなかった。これを「阪神球団の甘い体質」「管理監督者の気の緩み」だとする記事も見られた。

なぜここまで異様なほどバッシングを受けたのか。藤浪晋太郎をはじめとする選手は、阪神球団の社員ではない。球団と契約した個人事業主だ。彼らが野球以外で球団に拘束されなければいけない義務はないのだ。

もちろん、野球協約には2月1日から11月30日まで選手は球団の支配下にある。しかしそれはプライベートな時間にまで及ぶものではない。彼がユニフォームを脱いで何をしようと、それは選手の自己責任だ。

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