43歳漫画家「死の淵を2度も経験した」壮絶人生 ある日、障害者になった男が語る心の拠り所

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脳腫瘍とひき逃げに遭い、「2度死んだ」漫画家のサシダユキヒロさんさん。その壮絶な体験談を伺った。

死ぬかと思った――。誰でもそういった経験はあるかもしれない。しかし、実際に死の淵に立ったことがある人は、どれくらいいるだろう?

「脳腫瘍」と「ひき逃げ」。サシダユキヒロさん(43歳)は、1度ならず2度、生死の境をさまよった経験を持つ漫画家だ。1度目となる脳腫瘍は、野球マンガ『Starting Over』連載終了後の2010年、スーパー銭湯の浴槽で突如ブラックアウトに襲われ救急搬送。そして、手術を乗り越え、退院から約4年後、ひき逃げに遭遇し、再び死線をさまよった。

事故後、サシダさんの左手足には障害が残った。障害等級(レベル)4。杖がなくては、歩くこともままならない。“社会での日常生活・活動が著しく制限される”ほどの後遺症である。

「受け入れる、受け入れられないじゃなくて、意味がわからなかった」

微苦笑交じりに述懐するサシダさんの左足には、いまも歩行を補助する装具が付けられている。「まさか自分が障害者になるなんて」。彼の言葉は、「自分は大丈夫だろう」、そんなことを何の根拠もなく考えてしまうわれわれの背筋を正すような重みを帯びている。

事故や病気を未然に防ぐための準備や習慣は耳にしたことはあっても、事後についてとなると、いったいどれだけの人が理解しているだろうか。今現在も「向き合っている最中にいる」と語るサシダさんに、障害を背負うかもしれない病気や事故に遭遇した際、私たちはどんな心の持ちようでいることが望ましいと思うか、話を伺った。

30代にして「悪性度3の脳腫瘍」を発症

「入院時は、過度に考えすぎないようにしていました。病院とは言え、今はスマホを操作できますから、自分の状況を検索することができる。でも、僕はいっさい調べなかった。プロの判断を信用することが大切です。そのため、担当の先生との信頼関係は重要だと思います」

搬送後、サシダさんの脳腫瘍は、悪性度(グレード)が3であることが判明した。がんのようなステージ分類とは異なるため、グレードの高さが余命に直結するわけではない。ところが、家族は自分で調べてしまい、サシダさんが危険な状態にあると勘違いしてしまったという。

次ページ脳腫瘍と宣告され、目の前が真っ暗に
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