家賃90万円滞納を妻に隠した元エリートの破滅 29歳で独立も失敗、離婚→自己破産に陥った

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絵に描いたような幸せな家庭が家賃滞納に陥った理由は何だったのでしょうか(写真:bee/PIXTA)
「家賃滞納」は、決してひとごとではありません。
普通の人がいつ陥るかもしれない貧困の入り口です。有名私立大学を卒業後、大手の広告代理店に就職し、幸せな家庭を築いていた30歳男性。なぜ18万円の家賃を5カ月滞納し強制執行を受けるまで堕ちてしまったのでしょうか?
2200人以上の家賃滞納者と接した司法書士の太田垣章子氏の著書『家賃滞納という貧困』より一部抜粋のうえ、紹介します。

かつて「一億総中流社会」と言われていた日本。がんばればマイカーを所有し、家まで持てました。雇用も安定し、将来の不安もなかったのではないでしょうか。勤めあげれば、退職金も年金も当たり前のようにもらえ、老後に孫たちを引き連れての旅行だって楽しむことができました。

しかしバブルが崩壊し、日本経済は大きく変化していきました。大企業が倒産する時代。年金も受給年齢は先送りとなり、金額だってこの先どれだけ受け取ることができるのか不明です。定年の年齢も引き上げられてきましたが、年金受給までの空白の期間もあります。

人生100年時代。反面、長い老後のための資金が足りません。働ける間は少しでも働きたい。多くの人がそう思っているはずです。それでも国民の多くは、自分が貧困と紙一重のところにいるとは思っていません。

突然鳴ったインターホン

相馬理香さん(29歳、以下すべて仮名)も、そのひとりでした。

その日、彼女は2歳になる娘と、いつものように部屋で遊んでいました。幼稚園に通うようになるまでの、母と子とのゆったりとした時間。穏やかなひとときでした。

「裁判所です。相馬さん、いらっしゃいますか?」

突然インターホンが鳴りました。裁判所? 何かの間違いだろうし、かぎを開けるのが怖かったのでしょう。ヘンな詐欺商法だったら怖いから……。理香さんは、インターホン越しに息を潜めました。またインターホンが鳴ります。

「裁判所です。相馬さん、いらっしゃいませんか? かぎ開けますよ」

同時にドアが引っ張られ、がちゃがちゃとドアノブが鳴る音が聞こえました。怖い! そう思った次の瞬間、見知らぬ男がドアを開けたのです。

「いらっしゃったのですね。裁判所です。相馬さんですか?」

ドアの向こう側に、数人の男性が見えました。差し出された名刺を見ると、地方裁判所の執行官と書かれています。

「相馬一人さんが家賃払っていらっしゃらないからね、強制執行で来ました。奥さんですか? ちょっと中に入っていいですか?」

執行官と名乗る人が何を言っているのか、理解できませんでした。

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