家賃90万円滞納を妻に隠した元エリートの破滅 29歳で独立も失敗、離婚→自己破産に陥った

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家賃を払ってない? 何のこと? 頭がパニックになって、執行官と名乗る人の説明も頭に入ってきません。部屋の壁に1枚の紙が貼られましたが、それすら意味がわかりません。とにかく一人に電話しなきゃ……。涙声で、うまくしゃべれません。

一人さんから「家に戻ったら説明する」と言われ、そこで初めてこれが現実のことだと知ったのです。

幸せな家庭を暗転させた起業

賃借人である相馬一人さん(30歳)は、消え入るような声で語ります。

「妻にはどうしても言い出せなかったんです」

一人さんは有名私立大学を卒業後、大手の広告代理店に就職。年収は同世代の中でもいいほうで、28歳にしてすでに日本の平均年収を軽く超えていました。

学生時代から付き合っていた理香さんと25歳で結婚し、すでに5年。娘も生まれました。世田谷にある家賃18万円超の部屋に住み、はたから見ても幸せな家族だったに違いありません。

坂道を転がり落ちるきっかけは、起業でした。

仕事が楽しくて仕方がなくなった頃、40代で年の半分を海外で過ごす、そんな人の記事を目にしました。パソコン1台でどこででも仕事ができる。不動産投資や株投資で、不労所得もある。そんな内容でした。株や不動産が稼いでくれるなら、仮に年金が入らなくても、心配することはありません。

こんなカッコいい人もいるのだ、衝撃でした。会社は大手で安定していたけれど、自分がぬるま湯に浸かっている気がしました。もっと刺激的な生活をしたい、もっと稼ぎたい、そのためにはここから飛び出そう、そう夢見た結果の独立でした。

今なら、もっと準備期間を取るべきだったとわかります。でもそのときは、ただただ記事に刺激され、1日でも早く勝負の世界に出たいと現実が見えていませんでした。

理香さんはサラリーマン家庭に育ったので、もともと起業には反対でした。それでも反対を押し切って、29歳のときに独立起業。

売り上げのメドは立っていました。サラリーマン時代に担当したクライアントも、独立したら仕事を任せてくれると言ってくれたので安心していました。

でもこれが甘い見通しでした。

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